【おそらく次の人事で私の役員への昇格は間違いないだろう…。それを確実にするためにもうひと押しと…現在進めている湾岸都市の再開発事業…これをなんとか取り纏める必要があった…。対立するゼネコン候補は二つ…。対抗企業の鳳が推すゼネコン大和組と…私の会社、鏡の推すゼネコン斑鳩組…。近々行われる入札の前に絶対に相手方の入札額を知る必要があった…。そこで情報入手の為にコンタクトを取ったのが大和組、役員の専属秘書の女だった…。ゼネコンは所詮大手総合商社の下請けにすぎない…。だったら次期役員候補の私と関係を繋いでも損にはならないという話だ…。上手く事が運んだ暁には、ヘッドハンティング…私の役員昇格の際には専属秘書に取り立ててやると…打診していた…。先ずはと二人きりでの宴席を設けた…。私が贔屓にしている料亭の離れにある個室…。なかなかの遣り手だと噂のある女性だ…。現在、専属として仕えている大和組役員も彼女の力添えがあって今の地位まで上り詰めたと聞いている…。彼女を手に入れれるとしたら、今後の私にとっても強力な後押しとなってくれるだろう…。先ずはお互いに品定めといったところか…。時計は19時になろうとしていた…。私が個室で席について待っていると、中居が、お連れ様がお付きです…と声をかけてきて…襖を開けるとその後ろに立つ女性と初対面を果たした…。】