地下格闘技で勝利を続けた10代の俺は、多くの悪い大人に連れ回されることになる。ヤクザをはじめ、裏社会の関係者(今でいう半グレ)から夜の遊び方やビジネスのノウハウを教わった。
吸収力のある俺はどんどん学んでいった。

20歳になる前に気付けばいくつかのフロント企業を任されるまでに成長した。
腕っぷしの世界だけでなく、ビジネスの世界でも一定の成功をおさめた俺は退屈を感じ始めた。

その頃から夜になると昔のように血を流す闘争に明け暮れた。毎日のように街に出て闘い、何度も逮捕された。
いつしか俺の異名は轟き、地元を遥か超えた血で『河内の龍』と謳われるようになっていた。

20代にして俺は全てを成した。
いくら金を稼いでも、女を抱いても、名声を得ても、地位を築こうとも俺の心は満たされなかった。
海外を彷徨ったり、世界中の本を読み漁った時期もある。俺の思う全てを壊してくれる、自分の固定観念を打ち破ってくれる何かを探して求めていたのかもしれない。
しかしそれは結局俺の原点である闘いの中からしか生まれなかったのだ。
ある意味、俺は人が羨む全てを持って産まれたのかもしれない。だが、俺という生命体は闘いの中でしか生を実感できないという悲しい性を抱えていた。
頬白鮫が泳ぎ続けないと死んでしまうように、俺は闘い続けないと生きることができなかった。