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「おそ松さん【成りチャ】」の過去ログ

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2017年07月16日 17時13分 ~ 2019年10月07日 18時57分 の過去ログ
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おめめ((大遅刻ごめんよ!!!!!!   (2017/7/16 17:13:05)

おしらせおめめさんが退室しました。  (2017/7/16 17:13:08)

おしらせ殉/未定さんが入室しました♪  (2017/7/20 23:05:28)

殉/未定((   (2017/7/20 23:05:38)

殉/未定((らむりんお疲れ!!   (2017/7/20 23:06:05)

殉/未定((瑠璃んごーー!!ごごごご   (2017/7/20 23:07:49)

殉/未定((来てくれてありがとうううううう   (2017/7/20 23:09:40)

殉/未定((久しぶりね!!!   (2017/7/20 23:10:03)

殉/未定((おおう!   (2017/7/20 23:11:50)

殉/未定((おめめ   (2017/7/20 23:12:28)

殉/未定((紫音ちゃんかな?全然構わんよ来てくれてありがとううー!!!(*Ü*)ノ   (2017/7/20 23:15:08)

殉/未定((またくる!   (2017/7/20 23:15:56)

おしらせ殉/未定さんが退室しました。  (2017/7/20 23:16:00)

おしらせ紫音./さんが入室しました♪  (2017/8/16 12:49:39)

紫音./((やふー!!   (2017/8/16 12:49:54)

紫音./((はじめてここきてからもう一年経ったのか……はやい   (2017/8/16 12:50:30)

紫音./((そうですおめめはわたし!!   (2017/8/16 12:50:52)

紫音./((またくる!!   (2017/8/16 12:51:16)

おしらせ紫音./さんが退室しました。  (2017/8/16 12:51:18)

おしらせ毎日顔出し係ばにらんさんが入室しました♪  (2017/9/24 23:40:15)

毎日顔出し係ばにらん((ンンン、名前長いな略したい…   (2017/9/24 23:40:34)

毎日顔出し係ばにらん((まぁ自分だけでも毎日来ようかなと!夜しか浮上できないし、成りも元々ない語彙力が今では皆無だからねw   (2017/9/24 23:41:56)

毎日顔出し係ばにらん((顔出し係兼雑談的な?w   (2017/9/24 23:42:31)

毎日顔出し係ばにらん((私影薄いから、知名度もまぁ低いとね。こりゃ参った(殴   (2017/9/24 23:43:17)

毎日顔出し係ばにらん((長くなったけど、必ず夜に独り言呟いてるんで来てね!(目指せ私だけで埋まるロル)   (2017/9/24 23:44:47)

おしらせ毎日顔出し係ばにらんさんが退室しました。  (2017/9/24 23:44:50)

おしらせ毎日顔出し係ばにらんさんが入室しました♪  (2017/9/26 00:09:49)

毎日顔出し係ばにらん((へへっ、色を変えてきたぜ。うん、汚いようないr((((   (2017/9/26 00:11:18)

毎日顔出し係ばにらん((これでよし。薄い色が好きだな、やっぱり。   (2017/9/26 00:12:10)

毎日顔出し係ばにらん((てか、昨日?っていうのか?毎日ブツブツ言うのも悲しいし、「可笑しな人」ってお初様とかその他とかに思われても嫌だしね。まぁ、ソロルも書けないわけで。   (2017/9/26 00:14:45)

毎日顔出し係ばにらん((こっちのルム来てぇぇぇ!!私にかまって((   (2017/9/26 00:16:09)

毎日顔出し係ばにらん((今日は、っつーか重大なことに気付いちゃったんよ。言えないんだけど。強いていえば友達をネットで見つけたっていう感じ?(完全そうなんだけど)   (2017/9/26 00:20:25)

毎日顔出し係ばにらん((うん、悲しいね。ネットサーフィンしてから寝ます。good night.   (2017/9/26 00:21:03)

おしらせ毎日顔出し係ばにらんさんが退室しました。  (2017/9/26 00:21:06)

おしらせ毎日顔出し係ばにらんさんが入室しました♪  (2017/9/27 15:13:56)

毎日顔出し係ばにらん((ああああ、昨日来れる時間無かった……2日坊主かよ()   (2017/9/27 15:14:41)

毎日顔出し係ばにらん((ROMsam   (2017/9/27 15:14:54)

毎日顔出し係ばにらん((間違えたwwROMさん来てね!   (2017/9/27 15:15:14)

毎日顔出し係ばにらん((自分語りっぽくなるんだけど、やっぱり私ってこの色が安定感あるなぁ…と思ったわけよ。ジュッティ成りしてた時が懐かしいね。   (2017/9/27 15:19:22)

毎日顔出し係ばにらん((てか、もうすぐおそ松さん2期始まるよ!ヤッタネ!此れを期に皆が持った   (2017/9/27 15:20:22)

毎日顔出し係ばにらん((誤タップ多すぎ…。まぁ、皆がまた集まってルムが賑やかになってくれないかなー、っていう妄想なんだけどね(笑)皆に会いたいね、瑠璃ちゃとかじゅんにぃとかその他の仲良し(?)メンバーとかね。勿論、私は知らないけど皆が面識ある人とかね。   (2017/9/27 15:22:55)

毎日顔出し係ばにらん((用事有ってもう出ないとだからこれまでにしときます。明るい話がしたい!!!!   (2017/9/27 15:24:29)

おしらせ毎日顔出し係ばにらんさんが退室しました。  (2017/9/27 15:24:32)

おしらせ毎日顔出し係ばにらんさんが入室しました♪  (2017/9/29 23:07:38)

毎日顔出し係ばにらん((どうも。「毎日」を守っていないにも関わらず、夜更かしして1000m走り体調不良?だった私ですw   (2017/9/29 23:08:48)

毎日顔出し係ばにらん((今思った、毎日って鬱陶しくね?(今更)1週間に3~4回にしよっかな…   (2017/9/29 23:09:53)

毎日顔出し係ばにらん((うん、そうしよう。そうします。   (2017/9/29 23:10:39)

毎日顔出し係ばにらん((話す話題もないので消えます。そんじゃノシ   (2017/9/29 23:11:05)

おしらせ毎日顔出し係ばにらんさんが退室しました。  (2017/9/29 23:11:07)

おしらせらむさんが入室しました♪  (2017/10/6 03:22:42)

らむ((おい、お前それ週3、4も守れてないよ!!!   (2017/10/6 03:23:08)

らむ((うふふ、おひさー。中間終わったからきたよん。   (2017/10/6 03:23:30)

らむ((でもりむは中間なうだから仕方ないよね。   (2017/10/6 03:23:47)

らむ((私はまだ何も返ってきてなぁい   (2017/10/6 03:24:08)

らむ((昨日終わったばっかりだからねー、あ、一昨日かな?   (2017/10/6 03:24:38)

らむ((つーかすんごい時間   (2017/10/6 03:24:46)

らむ((明日起きれなさそう、ww 落ちよかな。のしのし!!   (2017/10/6 03:25:08)

おしらせらむさんが退室しました。  (2017/10/6 03:25:12)

おしらせ毎日顔出し係ばにらんさんが入室しました♪  (2017/10/6 18:49:43)

毎日顔出し係ばにらん((ンンン、色がしっくり来ない…   (2017/10/6 18:50:26)

毎日顔出し係ばにらん((らむりんイエーイ   (2017/10/6 18:50:34)

毎日顔出し係ばにらん((今日中間終わったぜぃ!!らむりんも中間お疲れー!ゲーム解禁オメオメ   (2017/10/6 18:51:20)

毎日顔出し係ばにらん((コ、コマケーコトハキニスンナ。べ、勉強が忙しかったんだ。塾という楽しみとか(真顔   (2017/10/6 18:54:15)

毎日顔出し係ばにらん((明日から父の実家帰ります。くそ、ネットが使えん!!   (2017/10/6 18:56:30)

毎日顔出し係ばにらん((久々の部活楽しかったぜ!!上手くないけど、楽しいね。雨すごかったし、暑いと思って窓開けたら寒くなるしねww皆さんは部活楽しいでしょうか?楽しいことを祈ります!!   (2017/10/6 18:59:49)

毎日顔出し係ばにらん((それではサラダバー!!   (2017/10/6 19:00:04)

おしらせ毎日顔出し係ばにらんさんが退室しました。  (2017/10/6 19:00:06)

おしらせしおんさんが入室しました♪  (2017/12/12 20:20:27)

しおん((ぎょえええええ、お部屋開けすぎてたよ、入れてなかったこれてなかったァ!!!!   (2017/12/12 20:20:54)

しおん((うーん人増えないかなぁまた   (2017/12/12 20:21:14)

しおん((ミナコイも過疎ってきてるしねぇ   (2017/12/12 20:21:30)

しおん((うむむ、悠に会いたいなりよ   (2017/12/12 20:21:52)

しおん((はにぃに会えてなくって、辛いですなぁ   (2017/12/12 20:22:04)

しおん((またくるー!!   (2017/12/12 20:22:11)

おしらせしおんさんが退室しました。  (2017/12/12 20:22:13)

おしらせ紫音/さんが入室しました♪  (2018/1/3 19:06:36)

紫音/((やあやあ!!!!   (2018/1/3 19:06:44)

紫音/((あけおめ!!!!いやあれだけど!!!!大遅刻だけど!!!!   (2018/1/3 19:07:17)

紫音/((じゃ!!!!   (2018/1/3 19:07:47)

おしらせ紫音/さんが退室しました。  (2018/1/3 19:07:50)

おしらせしおんさんが入室しました♪  (2018/2/21 23:23:18)

しおん((りれきのこし~~~   (2018/2/21 23:23:32)

おしらせしおんさんが退室しました。  (2018/2/21 23:23:35)

おしらせ水晶.さんが入室しました♪  (2018/3/20 07:11:05)

水晶.((やっほいー(   (2018/3/20 07:11:24)

水晶.((顔出しだぜ、()   (2018/3/20 07:11:37)

おしらせ水晶.さんが退室しました。  (2018/3/20 07:11:41)

おしらせしおんさんが入室しました♪  (2019/4/14 18:30:23)

しおん((たぶん誰も来ないだろうけど来ちゃったキャッ   (2019/4/14 18:30:49)

しおん((懐かしいがすぎるな~~~~~~1年は開けてたよねこ   (2019/4/14 18:31:10)

しおん((うわ誤字   (2019/4/14 18:31:58)

しおん((ごめんね急に入ってきちゃってホントに 大人しく落ちます   (2019/4/14 18:33:41)

しおん((ばいばい~   (2019/4/14 18:33:49)

おしらせしおんさんが退室しました。  (2019/4/14 18:33:51)

おしらせしろさんが入室しました♪  (2019/5/12 13:07:14)

しろ((うっっっっっわヤバい……見つけちゃったよ……   (2019/5/12 13:07:29)

しろ((久しぶり………誰か見てくれんのかな……… やーば   (2019/5/12 13:07:48)

しろ((とりあえず書き置き的な感じで。お久し振りでした   (2019/5/12 13:08:11)

おしらせしろさんが退室しました。  (2019/5/12 13:08:15)

おしらせ.さんが入室しました♪  (2019/10/7 18:45:44)

.寝つきりに寝つくやうになる少し前に修善寺へ行つた。その頃はもうずゐぶん衰弱してゐたのだが、自分ではまだそれほどとは思つてゐなかつた。少し体を休めれば、ぢきに元気を回復するつもりでゐた。温泉そのものは消極性の自分の病気には却つてわるいので、私はただ静かな環境にたつたひとりでゐることを欲したのである。修善寺は前に一晩泊つたことがあるきりで、べつにいい所だとも思はなかつたが、ほかに行くつもりだつた所が、宿の都合がわるいと断つて来たので、そこにしたのだつた。   (2019/10/7 18:46:32)

.宿についた私はその日のうちにもうすつかり失望して、来たことを後悔しなければならなかつた。実にひどい部屋に通されたのだ。それは三階の端に近いところで、一日ぢゆう絶対に陽の射す気づかひはなく、障子を立てると昼すぎの一番明るい時でも持つて来た小型本を読むのが苦労だつた。秋もまだ半ば頃なのだが山の空気は底冷えがする。熱も少しあるらしく、冷ひいやりとした風が襟えりもとや首すぢにあたるごとにぞくぞくする。それに風のかげんで厠臭ししうがひどくて堪へられぬ。誰でもさうだらうが、私も体が弱るにつれて、それが悪臭なら無論、芳香であつても、すべてのにほひといふにほひには全く堪こらへ性しやうがなくなつてしまふのである。それで私はどうしても障子を立てて、一日その薄暗いなかに閉ぢこもつてゐなければならなかつた。   (2019/10/7 18:46:49)

.私は時々立つて障子を開けて、向ひ側の陽のよくあたる明るい部屋部屋を上から下まで、羨うらやましさうに眺めやつた。広い縁側の長椅子の上に長々と横になつてゐる人間たちを眺めやつた。客はさう混んでゐるとも思へなかつた。私はいきなり飛び込んだ客ではなくて、予あらかじめ手紙で問ひ合してから来た者でもある。私は女中を呼んで部屋を代へることを交渉したが、少しも要領を得なかつた。   (2019/10/7 18:47:15)

.一人客の滞在客といふ、かういふ宿にとつての、一番の嫌はれもので、私はあつたのだ。明いてゐるいい部屋は幾つあつても、それらは女連れなどで来て遊んで帰る者たちのためにだけ取つてある。その春放送局の用事で福島県の農村地方を廻つた時は、土地の人にある温泉地へ案内されたが、靴を脱いで上へあがつてから泊るのは一人だとわかると、いきなりそんなら部屋はないといはれ、帚はうきで掃くやうにして追ひ立てられた時のことを思ひ出した。軍需成金共が跋扈ばつこしてゐて、一人静かに書を読まうとか、傷ついた心身を休めようとか、さういふやうなものは問題ではないのだ。さうかと思ふと一方にはまた温泉組合の機関雑誌といふものがあり、「我々温泉業者も新体制に即応し、国民保健の担当者たることを自覚し……」などと書いて、我々の所へも送つて来たりしてゐるのである。   (2019/10/7 18:47:33)

.つまらぬことに腹は立てまい、ちよつとしたことにものぼせるのは自分の欠点だ、怒気ほど心身をやぶるものはない、この頃は特にさう思ひ思ひして来てゐる自分なのだが、怒りがムラムラと発して来てどうにもならなかつた。この堪こらへ性しやうのなさもやはり病気が手伝つてゐた。無理をして余裕をつくり、いろいろ楽しい空想をして来たのにと思ふと、読むために持つて来た本を見てさへいまいましくてならない。不機嫌を通り越して毒念ともいふべきものがのた打つて来た。食欲は全くなかつた。時分どきになると、無表情な無愛想な女が、黙つてはひつて来て、料理の名をならべた板を黙つて突き出す。こつちも黙つて、ろくすつぽう見もしないで、そのなかのどれかこれかを、指の頭でおす。   (2019/10/7 18:47:53)

.新しい宿を探して見ようといふ気力さへなかつた。さうかといつてさつさと引きあげて帰るといふ決断力もなかつた。  自然、飯の時のほかは外に出てゐるといふ日が多くなつた。範頼のりよりの墓があるといふ小山や公園や梅園や、そんな所へ行つてそこの日だまりにしやがんでぼんやり時を過して帰つてくるのだ。   (2019/10/7 18:48:14)

.或る日私は桂川の流れに沿つて上つて行つた。かなり歩いてから戻つて来て、疲れたのでどこか腰を下ろす所と思つてゐると、川をすぐ下に見下ろす道ばたに、大きな石が横たはつてゐるのを見た。畳半分ほどの大きさでしかも上が真まつ平たひらな石である。私はその上に腰をかけて額の汗をぬぐつた。あたりには人影もない明るい秋の午後である。私は軽い貧血を起したやうなぼんやりした気持で、無心に川を見下ろしてゐた。川は両岸から丁度同じ程の距離にあるあたりが、土がむき出して洲すになつてゐる。しかしそれは長さも幅も、それほど大きなものではない。流れはすぐまた合して一つになつてゐる。こつちの岸の方が深く、川のなかには大きな石が幾つもあつて、小さな淵を作つたり、流れが激しく白く泡立つたりしてゐる。底は見えない。向う岸に近いところは浅く、河床はすべすべの一枚板のやうな感じの岩で、従つて水は音もなく速く流れてゐる。   (2019/10/7 18:48:31)

.ぼんやり見てゐた私はその時、その中洲なかすの上にふと一つの生き物を発見した。はじめは土塊つちくれだとさへ思はなかつたのだが、のろのろとそれが動きだしたので、気がついたのである。気をとめて見るとそれは赤蛙だつた。赤蛙としてもずゐぶん大きい方にちがひない、ヒキガヘルの小ぶりなのぐらゐはあつた。秋の陽に背なかを干してゐたのかも知れない。しかし背なかは水に濡れてゐるやうで、その赤褐色はかなりあざやかだつた。それが重さうに尻をあげて、ゆつくりゆつくり向うの流れの方に歩いて行くのだつた。赤蛙は洲の岸まで来た。彼はそこでとまつた。一休止したと思ふと、彼はざんぶとばかり、その浅いが速い流れのなかに飛びこんだ。   (2019/10/7 18:48:56)

.それはいかにもざんぶとばかりといふにふさはしい飛び込み方だつた。いかにも跳躍力のありさうな長い後肢あとあしが、土か空間かを目にもとまらぬ速さで蹴つてピンと一直線に張つたと見ると、もう流れのかなり先へ飛び込んでゐた。さつきのあの尻の重さうな、のろのろとした、ダルな感じからはおよそかけはなれたものであつた。私は目のさめるやうな気持だつた。遠道とほみちに疲れたその時の貧血的な気分ばかりではなく、この数日来の晴ればれしない気分のなかに、新鮮な風穴が通つたやうな感じだつた。   (2019/10/7 18:49:11)

.赤蛙は一生懸命に泳いで行く。彼は向う岸に渡らうとしてゐるのだ。川幅はさほどでもないのだが、しかし先に言つたやうに流れは速い。その流れに逆らふやうにして頭を突つ込んで泳いで行く赤蛙はまん中頃の水勢の一番強いらしい所まで行くと、見る見る押し流されてしまつた。流されながらちよつともがくやうに身振りをしたかと思ふと、それは一瞬、私の視野から消えてしまつた。波に呑まれてしまつたのだ。私ははツと思つて目をこらした。するとやがてそれは不意に、思ひがけないところに、ぽつかりと浮いて、姿をあらはした。中洲の一番の端――中洲が再び水のなかに没し去らうとするその突端に辛からうじて這はひ上つたともいふやうな恰好で、取り附いてゐるのだつた。   (2019/10/7 18:49:31)

.赤蛙は岸へ上つた。そこで一休みしてゐた。私にはその大きな腹が、喘あへいだ呼吸に波打つてでもゐるやうな気がした。やがて赤蛙はのたりのたり歩きだした。そして、元の所へ――私が最初に彼を発見したその場所まで来ると、そこにうづくまつたのである。   (2019/10/7 18:49:51)

.何かを期待してぢつと一所を見つめてゐるといふのは長いものだ。それは長く思はれたが、五分は経たなかつただらう、赤蛙は再び動きだした。前と同じやうに流れの方へ向つて。そして飛び込んだ、これも前と同じに。一生懸命に泳ぎ、押し流され、水中に姿を没し、中洲の突端に取りつき、這ひ上り、またもとの所へ来てうづくまる、――何から何までが前の時とおなじ繰り返しだつた。そして今不思議な見ものを見るやうな思ひで凝視してゐる私の目の前で赤蛙は又もや流れへ向つて歩きだしたのである。  私は赤蛙をはじめて見つけた時、その背なかの赤褐色が、濡れたやうに光つてゐたことを思ひだした。して見ると私は初めから見たのではない。私が見る前に、赤蛙はもう何度この繰り返しをやつてゐたものかわからない。   (2019/10/7 18:50:10)

.「馬鹿な奴だな!」私は笑ひだした。   (2019/10/7 18:50:35)

.赤蛙は向う岸に渡りたがつてゐる。しかし赤蛙はそのために何もわざわざ今渡らうとしてゐるその流れをえらぶ必要はないのだ。下が一枚板のやうな岩になつてゐるために速い流れをなしてゐる所が全部ではない。急流のすぐ上に続くところは、澱よどんだゆつくりとした流れになつてゐる。流れは一時そこで足を止め、深く水を湛たたへ、次の浅瀬の急流にそなへてでもゐるやうな所なのである。その小さな淵の上には、柳のかなりな大木が枝さへ垂らしてゐるといふ、赤蛙にとつては誂あつらへ向むきの風景なのだ。なぜあの淵を渡らうとはせぬのだらう?   (2019/10/7 18:51:00)

.私がそんなことを考へてゐる間にも、赤蛙は又も失敗して戻つて来た。私はそろそろ退屈しはじめてゐた。私は道路から幾つかの石を拾つて来て、中洲を目がけて投げはじめた。赤蛙を打たうといふ気はなかつた。私はただ彼を驚かしてやりたかつた。彼に周囲を見まはすきつかけをつくり、気づかせてやりたかつた。石は赤蛙の周囲に幾つも落ちた。速い流れにも落ちた。淵にも落ちて、どぶんといふ音はこつちを見よとでもいふかのやうだつた。赤蛙はびくつとしたやうに頭を上げたり、ちよつと立ち止つたりしたが、しかし結局予定通り動くことをやめなかつた。飛び込んで泳ぐこともやめなかつた。   (2019/10/7 18:51:16)

.私は石を投げることをやめて、また石の上に腰を下ろした。   (2019/10/7 18:51:31)

.秋の日はいつか日がかげりつつあつた。山や森の陰の所は薄蒼うすあをくさへなつて来てゐた。私は冷えが来ぬうちに帰らねばならなかつた。しかし私は立ち去りかねてゐた。   (2019/10/7 18:51:42)

.次第に私は不思議な思ひにとらはれはじめてゐた。赤蛙は何もかにも知つてやつてゐるのだとしか思へない。そこには執念深くさへもある意志が働いてゐるのだとしか思へない。微妙な生活本能をそなへたこの小動物が、どこを渡れば容易であるか、あの小さな淵がそれであることなどを知らぬわけはない。赤蛙はある目的をもつて、意志をもつて、敢て困難に突入してゐるのだとしか思へない。彼にとつて力に余るものに挑いどみ、戦つてこれを征服しようとしてゐるのだとしか思へない。私はあの小さな淵の底には、その上を泳ぎ渡る赤蛙を一呑みにするやうな何かが住んでゐるのかも知れない、あるひはまたあの柳の大木の陰には、上から一呑みにするやうな蛇の類がひそんでゐるのかも知れない、といふやうなことも考へてみた。しかしその時の私にはそんなことを抜きにしてさきのやうに考へることの方が自然だつた。その方が自分のその時の気持にぴつたりとした。   (2019/10/7 18:51:58)

.赤蛙は依然として同じことを繰り返してゐる。はじめのうちは「これで六回、これで七回」などと面白がつて数へてゐた私は、そのうち数へることもやめてしまつた。川の面の日射しがかげり出す頃からは赤蛙の行動は何か必死な様相をさへも帯びて来た。再び取りかかる前の小休止の時間も段々短かくなつて行くやうだつた。一度はもうちよつとの所で向う岸に取りつくかと見えたが、やはり流された。それが精魂を傾け尽した最後だつたかも知れない。それからは目に見えて力もなく脆もろく押し流されてしまふやうに見えた。坂を下る車の調子で力が尽きて行くやうに見えた。   (2019/10/7 18:52:13)

.吹く風も俄にはかに冷たくなつて来たし、私は諦あきらめて立ち上つた。道風たうふうの雨蛙は飛びつくことに成功したがこの赤蛙はだめだらう……私は立つて裾のあたりを払つた。もう一度、最後に、川の面に眼をやつた。   (2019/10/7 18:52:38)

.私は思はず眼を見張つた。ほんのその数瞬の間に赤蛙は見えなくなつてしまつてゐた。私はまた中洲の突端に取りついて浮び上る彼の姿を待つてゐたが、今度はいつまでたつても現れなかつた。遂に成功して向う岸にたどりついたのだとはどうしても思へなかつた。私は未練らしく川のあちらこちらを何度も眺め廻したあとでたうとうそこを立ち去つてしまつた。   (2019/10/7 18:52:52)

.しかし川に沿うて下つて、まだ五間と行かぬうちに、思ひもかけぬところで再び彼と逢つたのである。   (2019/10/7 18:53:07)

.今度はすぐ眼の下、こつち岸に近いところだつた。そこは水も深く大石が幾つもならんでゐて、激して泡立つた流れの余勢が、石と石との間で蕩揺たうえうしたり渦うづを作つたりしてゐた。そしてさういふ石陰の深みの一つに赤蛙は落ち込んでゐるのだつた。かうなつた順序は明らかだつた。押し流される毎に中洲の突端にすがりついてゐた彼は、もうその力もなくなつて流されるがままになつたのだ。洲をはさんで一つに合した水の流れは大きく強くなつて、煽あふるやうな勢で、こつち岸へ叩きつけてよこしたのだ。事態は赤蛙にとつて、悲惨なことになつてしまつてゐた。彼は蕩揺する波に全く飜弄ほんろうされつつある。辛うじて浮いてゐるに過ぎぬやうだが、それが彼の必死の姿であることは、彼の浮いてゐる石陰のすぐ近くには渦巻があつて、絶えずそこへ彼を引きずり込まうとしてゐることからもわかるのだつた。   (2019/10/7 18:53:29)

.彼に残された活路はたつた一つきりだつた。石に這ひ上ることである。だが、その石の面たるや殆ど直立してゐて、その上に水垢みづあかでてらてらに滑つこくなつてゐるのだ。長い後肢も水中では跳躍力もきかず、無力に伸ばしたりかがめたりするのみだつた。時々彼の前肢は石の小さな窪みに取りついたが、すぐにくるつと引つ繰り返つて紅い斑点のある黄色な腹を空しくもがいた。私は何か長い棒のやうなものを差し伸べてやりたかつたが、そんなものはあたりには見あたらなかつた。今はただぢつとその帰趨きすうを見守つてゐるばかりである。   (2019/10/7 18:53:41)

.やがて赤蛙は最後の飛びつきらしいものを石の窪みに向つて試みた。さうしてくるつとひつくりかへると黄色い腹を上にしたまま、何の抵抗らしいものも示さずに、むしろ静かに、すーと消えるやうなおもむきで、渦巻のなかに呑みこまれて行つた。私は流れに沿うて小走りに走つた。赤蛙が再び浮くかも知れぬ川面かはづらのあたりに眼をこらした。しかし彼は今度はもう二度と浮き上つては来なかつた。   (2019/10/7 18:53:57)

.私はあたりが急に死んだやうに静かになつたのを感じた。事実にはかに薄暗くなつても来てゐた。私は歩きながらさつきからのことを考へつづけた。秋の夕べ、不可解な格闘を演じたあげく、精魂尽きて波間に没し去つた赤蛙の運命は、滑稽といふよりは悲劇的なものに思へた。彼を駆り立ててゐたあの執念の原動力は一体何であつたのだらう。それは依然わからない。わかる筈もない。   (2019/10/7 18:54:16)

.しかし私には本能的な生の衝動以上のものがあるとしか思へなかつた。活動にはひる前にぢつとうづくまつてゐた姿、急流に無二無三に突つ込んで行つた姿、洲の端につかまつてほつとしてゐた姿、――すべてそこには表情があつた。心理さへあつた。それらは人間の場合のやうにこつちに伝はつて来た。明確な目的意志にもとづいて行動してゐるものからでなくてはあの感じは来ない。ましてや、あの波間に没し去つた最後の瞬間に至つては。そこには刀折れ、矢尽きた感じがあつた。力の限り戦つて来、最後に運命に従順なものの姿があつた。さういふものだけが持つ静けささへあつた。馬とか犬とか猫とかいふやうな人間生活のなかにゐるああいつた動物ではないのだ。蛙なのだ。蛙からさへこの感じが来る、といふこの事実が私を強く打つた。   (2019/10/7 18:54:29)

.動物の生態を研究してゐる学者は案外簡単な説明を下すかも知れない。赤蛙の現実の生活的必要といふことから卑近な説明をするかも知れない。その説明は種明しに類するものかも知れない。そして力に余る困難に挑いどむことそれ自体が赤蛙の目的意志ででもあるかに考へてゐるやうな、私の迂愚うぐを嗤わらふであらう。私はしかし必ずさうだといふのではない。動物学者の説明の通りであつてもいい。だが蛙の如き小動物からさへああいふ深い感じを受けたといふその事、あの深い感じそのものは、学者のどのやうな説明を以てしてもおそらく尽すことは出来ぬのである。   (2019/10/7 18:54:44)

.私は自然界の神秘といふことを深く感じてゐた。私としては実に久方ぶりのことであつた。天体の事、宇宙のことを考へ、そこを標準として考へを立てて見る、といふことは私などにも時たまある。それは一種の逃避かも知れない。しかし豁然くわつぜんとした救はれたやうな心の状態を得るのが常である。その時と今とは同じではない。しかし自然の神秘を考へる時にもたらされる、厳粛な敬虔けいけんなひきしまつた気持、それでゐて何か眼に見えぬ大きな意志を感じてそこに信頼を寄せてゐる感じには両者に共通なものがあつた。   (2019/10/7 18:54:59)

.私は昼出た時とは全くちがつた気持になつて宿へ帰つた。臭い暗い寒い部屋も、不親切な人間たちも、今はもう何も苦にはならなかつた。私はしばらくでも俗悪な社会と人生とを忘れることができたのである。   (2019/10/7 18:55:12)

.私は翌日その地を去つた。たづさへて来た一冊の書物も読まず、ただあの赤蛙の印象だけを記憶の底にとどめながら。   (2019/10/7 18:55:32)

.病気で長く寝つくやうになつてからも、私は夢のなかで赤蛙に逢つた。私は夢のなかで色を見るといふことはめつたにない人間だ。しかし波間に没する瞬間の赤蛙の黄色い腹と紅の斑紋とは妖あやしいばかりに鮮明だつた。   (2019/10/7 18:55:47)

.昭和二十一年一月   (2019/10/7 18:56:15)

.赤蛙   (2019/10/7 18:56:21)

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おしらせ.さんが部屋から追い出されました。  (2019/10/7 18:57:59)

2017年07月16日 17時13分 ~ 2019年10月07日 18時57分 の過去ログ
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