「棺桶書房の御伽乃館」の過去ログ
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2023年09月24日 05時38分 ~ 2024年01月07日 11時21分 の過去ログ
過去ログでは上から下の方向に発言を表示しています
ハミング・イェーイ! | > | 生まれた時から町外れの僻地の為、店のマスターは繁華街のある町の中心部を見た事も無く、この辺の治安もかつての穏やかだった時代より時が止まっていたのだが、ある日、町の中心部で荒らし回っていたならず者の一人がふらりとこの僻地へ流れ落ち、穏やかだったここの日常を荒らし始めた。 (2023/9/24 05:38:36) |
ハミング・イェーイ! | > | シルクに集うこの町の男達は狼狽えつつもギャングを撃退しようとしたのだが、元々争い事の無い世界で生きて来た者達には何の抵抗も出来ず、逆にその微弱な自警力が晒された事によって更なるならず者達まで集まって来た。 (2023/9/24 05:38:48) |
ハミング・イェーイ! | > | 必死に治安を守るべく戦って来た店のマスターも店員も、加勢の常連客達も日々の戦いに疲れ果てたある日、その店へ見知らぬ男がふらりとやって来た。 (2023/9/24 05:39:00) |
ハミング・イェーイ! | > | 「こんにちは。実は私は公安に近い仕事をしておりまして、何か最近こちらがお困りのご様子と伺い、差し出がましいですがもし宜しかったらお役に立てますよ?勿論お金は要りません。」何処か馴れ馴れしい男が更に続けた。「私は、誰でも差別や境がなく、楽しく賑わい笑顔溢れる幸福の場所を探しに来ました。」 (2023/9/24 05:39:13) |
ハミング・イェーイ! | > | 突如として現れた得体の知れぬ相手に畏怖沸かしげに警戒したシルクの面々だったが、何故かこの男の方ではシルクを熟知しているようだった。しかも好意的にこの店の事を我が身のように熱く語っているのだ。話しをするうちにこの男の誠実さや人間性からやがて猜疑心は取り払われて、この男を信頼して一任する事になった。 (2023/9/24 05:39:25) |
ハミング・イェーイ! | > | それからは早かった。この男の人脈には名うての賞金稼ぎや公安上層部、傭兵という戦いのプロまで居て巧みに連携して戦い、この店や町へ多くのセキュリティーシステムを構築し、遂にならず者達を締め出す事に成功したのだった。 (2023/9/24 05:39:38) |
ハミング・イェーイ! | > | 全てをやり終えた後、この店や町を守ってくれた者達は人知れず消えていた。今ではあの当たり前だった静かな平和が訪れ、シルクに溢れるような笑顔や活気が戻って来た。 (2023/9/24 05:39:49) |
ハミング・イェーイ! | > | いつものようにマスターが掃除をしながら何気なく壁に目をやった瞬間、手からモップが離れた。店の壁にはこのシルクの常連客達の写真がビッシリと貼られているのだが、マスターの視線の先にあの謎の男が笑顔で写っていて、その写真の男と目が合った瞬間にマスターの古い記憶が一瞬で蘇った。 (2023/9/24 05:40:00) |
ハミング・イェーイ! | > | 5年くらい前だろうか。この男は難病の権威のいるここへ、治療の為訪れたと言っていた。そしてこの店に2回だけ顔を見せたのでは無いだろうか。「マスターもお客さんも良い人達ですね。僕もこの店のファンになりましたよ!」と、病で酒が飲めない彼は、それでも陽気に笑い、心から楽しんで居たようだ。 (2023/9/24 05:40:13) |
ハミング・イェーイ! | > | そして翌日、明日地元に帰ると言う彼がこの店を出る時にシャッターを切ったのがこの一枚だ。「ダメでした。余命5年だそうです。」そんな重すぎる辛い状況など一切感じさせない笑顔の彼がそこに居る。 (2023/9/24 05:40:24) |
ハミング・イェーイ! | > | ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ (2023/9/24 05:40:35) |
ハミング・イェーイ! | > | そして今日も。マスターや常連客達が、命懸けでここを守ってくれた【この店のファン】がふらりと現れるのを待って、ドアが開く度に期待に目を走らせるのだが、やはりそこに彼は居なかった。 (2023/9/24 05:40:47) |
ハミング・イェーイ! | > | ^ - ^ (2023/9/24 05:41:01) |
おしらせ | > | ハミング・イェーイ!さんが退室しました。 (2023/9/24 05:41:04) |
おしらせ | > | ダサいオサムさんが入室しました♪ (2023/9/24 09:42:30) |
ダサいオサム | > | 【お題】「探し物はここにあるのに」で始まり、「そこに彼はいなかった」で終わる物語 (2023/9/24 09:42:36) |
ダサいオサム | > | 探し物はここにあるのに。鏡の向こうにいる情け無い顔をした自分と、額に鎮座する老眼鏡を見つめ、深くため息をついた。 (2023/9/24 09:42:54) |
ダサいオサム | > | キャリアとして若い頃から才能は群を抜き、先輩であろうと関係なく男達をも唸らせ、実力で彼らを束ねる肩書を得た留美子は仕事は出来たが恋愛には疎く、気がつけば定年間近だというのに結婚はおろか彼氏と呼べる相手さえ巡り会う事も無かった。 (2023/9/24 09:43:20) |
ダサいオサム | > | そんな留美子の最近の楽しみは、最近たまたま再開した高校の同級生だった、仲良し三人組との旅行である。他の三人は全員既婚者だが、子供達は皆独り立ちしており、これまで家庭に尽くして来た自分の時間を取り戻して、第二の青春を楽しんでいた。 (2023/9/24 09:43:34) |
ダサいオサム | > | 今日も10時に駅に集まり、三連休を利用して鬼怒川や日光、そして那須へと温泉宿をベースに旅行の予定で、最近物忘れに悩まされる留美子は旅行の準備をメモに書いてはチェックしていたところ、 (2023/9/24 09:43:45) |
ダサいオサム | > | 衰えた視力に無くてはならない老眼鏡が見当たらず、迫り来る待ち合わせの時間に追われて焦りに焦って家中家探しをしたが見つからずに疲れ果て、ふとトイレで用を足した後、洗面台の鏡の前で自分の頭上にそれを発見したのだ。 (2023/9/24 09:43:59) |
ダサいオサム | > | 疲れとともに安堵して体から一気に力が抜けた。笑うしかない。でも時間も間に合った。これでやっと安心して出かけられそうだ。先に準備を済ませて用意された旅行グッズが綺麗に並べられたテーブルの端に、最後のピースが添えられた。 (2023/9/24 09:44:10) |
ダサいオサム | > | やがてバタバタとした喧騒も消えてカチャリと玄関から施錠の音を最後に静寂が支配した家の中で、テーブルに綺麗に老眼鏡達が並べられたままだったが、勿論そこに彼女は居なかった。 (2023/9/24 09:44:31) |
ダサいオサム | > | ^ - ^ (2023/9/24 09:45:40) |
おしらせ | > | ダサいオサムさんが退室しました。 (2023/9/24 09:45:44) |
おしらせ | > | 冬空さんが入室しました♪ (2023/9/24 14:18:57) |
冬空 | > | 【お題】「彼のごめんは軽すぎる」で始まり「それすらも夢だった」で終わる物語 (2023/9/24 14:19:15) |
冬空 | > | 彼のごめんは軽すぎる。 (2023/9/24 14:19:30) |
冬空 | > | 「ごめんな…」彼のこの言葉はこれで何度目だろうか?その一言に怒り悲しくなり何度と涙を流したことだろう… (2023/9/24 14:19:45) |
冬空 | > | そんなに私が悪かったの?何度自問自答を繰り返してきただろうか。何度も別れることも考えてはいたが彼の言葉にもう一度、もう少しだけ…とそうやって自分に言い聞かせては様子見しつつ離れられずにいたんだ。 (2023/9/24 14:19:57) |
冬空 | > | 忙してなかなか会えない時もあったがいつもお互い想い合っていたはずだったのに…。出会った頃はこんな日が来るとは思わずにいた。それがこんな風に彼と友達を失うことになるなんて… (2023/9/24 14:20:11) |
冬空 | > | 「俺がずっとそばにいるから。君を離したくないんだ…」その言葉にドキッとしてそれほどまでに想ってくれていたこと、嬉しかったのに。 (2023/9/24 14:20:25) |
冬空 | > | いつも一緒に過ごしていた彼が変わってしまったのはあの時からだ。共通の友達相手でも仲良くしていると嫉妬するほどだった彼。ある日を境に関心が薄れたように見えたんだ。 (2023/9/24 14:20:37) |
冬空 | > | それはあの女性、杏奈と知り合ってからのことだった。たまたま知り合った彼女と私達は何度も話すうちに親しくなっていった。そして彼は私との約束よりも彼女と過ごすことが増えていく。 (2023/9/24 14:20:50) |
冬空 | > | やがて2人の仲を疑い問い詰めれば「ただの友達だ。一番大切なのは君だから。」と。優しく抱きしめられ頭を撫でられれば、モヤモヤするものの信じたい気持ちもあって身を委ねてしまうのだった。 (2023/9/24 14:21:06) |
冬空 | > | その一方で彼の見えないところでは彼女からの暴言や嫌がらせがはじまり私を悩ませていた。このことを彼に相談しても真剣に取り合ってはくれず、私を苛立たせていた。 (2023/9/24 14:21:20) |
冬空 | > | ある日、彼の部屋に行くとちょうど2人に居合わせてしまった。「なにしにきたの?まだ彼と別れてないの?」と私の姿を見るなり彼女は次々と暴言を吐き修羅場と化した。 (2023/9/24 14:21:35) |
冬空 | > | そんな状況であるにも関わらず彼は止めようともせずに面倒くさそうに「2人で取り合うとか?そんなに俺がいいのかよ?…」と他人事のように呟いては苦笑していた。そんな彼に対して呆れと共に一気に気持ちは冷めていった。 (2023/9/24 14:21:47) |
冬空 | > | やがて私達は別々の道へと歩き出した。あの言葉はそんなに軽いものだったの?彼の言葉を信じ共に歩む未来を考えていたのに。 (2023/9/24 14:22:07) |
冬空 | > | それすらも夢だった。 (2023/9/24 14:22:17) |
おしらせ | > | 冬空さんが退室しました。 (2023/9/24 14:22:33) |
おしらせ | > | 冬空さんが入室しました♪ (2023/9/26 18:42:06) |
冬空 | > | 【お題】「音もなくほどけた」で始まり、「夏が始まる」で終わる物語 (2023/9/26 18:42:26) |
冬空 | > | 音もなくほどけた。 (2023/9/26 18:42:38) |
冬空 | > | キツく結んだはずの靴ひもはいつの間にかほどけていた。歩いているとほどけたヒモを踏んで転びそうになる。そこでやっと靴ヒモがほどけていることに気づくのだった。 (2023/9/26 18:42:58) |
冬空 | > | 脇によってしゃがみ込んでヒモを縛り直す。今度こそ大丈夫!と。 (2023/9/26 18:43:17) |
冬空 | > | 縛り直して立ち上がり歩き出せば今度はスカートの裾を踏んで転びそうになる。なんてツイてない日なんだろう…。 (2023/9/26 18:43:31) |
冬空 | > | これが少女漫画なら「危ない!大丈夫?」って彼が優しく支えてくれるんだろうか?しかし現実にはそんなこと起こるはずもなく、公衆の面前で派手に転ばずに済んだと安堵している自分がいる。 (2023/9/26 18:44:11) |
冬空 | > | 「相変わらずおっちょこちょいなんだからー…」と隣で笑いながら見ているのは昔からの親友である。 (2023/9/26 18:46:04) |
冬空 | > | 2人して笑いあえば再び歩き出す。靴ひもとは違い固く結ばれた絆は余程の事がない限りほどけることはないだろう。 (2023/9/26 18:46:22) |
冬空 | > | 「ねぇ…クレープ食べに行かない?」「あ!いいね!いこっ♪」 (2023/9/26 18:46:38) |
冬空 | > | 日差しの強くなった青空を眩しそうに見上げれば夏が始まるのを感じていた。 (2023/9/26 18:46:53) |
おしらせ | > | 冬空さんが退室しました。 (2023/9/26 18:47:05) |
おしらせ | > | 冬空さんが入室しました♪ (2023/9/29 12:40:13) |
冬空 | > | 【お題】「優しい嘘なら許されますか」で始まり、「それが最初で最後だった」で終わる物語 (2023/9/29 12:40:54) |
冬空 | > | 彼と知り合ってから数ヶ月…私達はまるで昔からの友達だったかのように会話は弾み、お互いの距離は一気に縮まっていった。 (2023/9/29 12:41:11) |
冬空 | > | そして彼の告白から私達は付き合うようになりやがて一緒に暮らすようになった。ところがある日を境に彼の様子は変わり、帰宅時間も遅くなる日々が続いていた。態度もどこか余所余所しくなり仕事が忙しくて疲れているとの理由に口数も減っていったのだ。 (2023/9/29 12:41:30) |
冬空 | > | 疲れて帰ってくる彼のことが心配になって「大丈夫?そんなに忙しいの?」と声をかければ彼の返事は決まって一言ぶっきらぼうに「大丈夫だから…」と。お互いうまく話せずにギクシャクしたまま時は流れていた。 (2023/9/29 12:41:46) |
冬空 | > | そんなある日、彼宛の宅配便が届いた。差出人には知らない女性の名前…。 (これ誰から…?)私はモヤモヤした気持ちを抱えたまま彼の帰りを待っていた。 (2023/9/29 12:42:02) |
冬空 | > | 彼は帰ってくるなりテーブルの上に置かれた宅配便に気づいて「ねぇ…これ開けてみて」となぜか私に開けさせようとしてきた。なかなか開けようとしない私に急かすように促す彼。渋々ゆっくり梱包を開けていくとそこにはマグカップが2つとメッセージカードが添えられていた。 (2023/9/29 12:42:16) |
冬空 | > | 『誕生日おめでとう。これからもずっと一緒にいよう』そういえば今日は私の誕生日だ。突然のことに驚きカードを何度も読み返していた。 (2023/9/29 12:42:29) |
冬空 | > | 「今まで黙っててごめん。残業だって嘘ついてコレを作っていたんだ…」少し照れながら口にすると気まずそうに視線を逸らせた彼。話によれば知り合いの陶芸教室に通っていたとのこと。口数が減っていたのは疲れていたことも事実ではあるがサプライズのプレゼントのことをうっかり口を滑らせてしまわないようにと彼なりに考えての行動だったようだ。それを聞いた私の瞳は潤み視界を滲ませた。 (2023/9/29 12:42:55) |
冬空 | > | 彼は私を抱きしめると優しく頭を撫でた。そして再び謝り「ごめんな…不安にさせて…。もう嘘はつかないから…」と呟くと指で涙を拭ってくれていた。 (2023/9/29 12:43:15) |
冬空 | > | 私を喜ばせようとしたこの優しい嘘なら許すことができるだろう… (2023/9/29 12:43:27) |
冬空 | > | 更に絆を深めた私達は翌年、永遠の誓いを交わした。約束通り彼の嘘はそれが最初で最後だった。 (2023/9/29 12:43:39) |
おしらせ | > | 冬空さんが退室しました。 (2023/9/29 12:43:54) |
おしらせ | > | 冬空さんが入室しました♪ (2023/10/14 15:44:02) |
冬空 | > | 【お題】「優しい嘘なら許されますか」で始まり、「それが最初で最後だった」で終わる物語 (2023/10/14 15:44:30) |
冬空 | > | 優しい嘘なら許されますか? (2023/10/14 15:44:43) |
冬空 | > | 「俺と…結婚してくれないか?」事の発端は1ヶ月程前のことである。 (2023/10/14 15:44:57) |
冬空 | > | 定時となり他の同僚達が次々に退社していくのを見送る中、仲の良い同期の涼也に相談があると声をかけられ食事に誘われた時の話である。 (2023/10/14 15:45:11) |
冬空 | > | 彼と共に退社すると個室のある店舗に入り私達は食事を注文した。そして料理を待っている間にあのプロポーズである。彼は私に恋人がいないことを確認した上で結婚してくれと言い出したのだ。 (2023/10/14 15:45:24) |
冬空 | > | 彼に対して好意はあるものの打ち明けたことすらなく恋人同士でもない。それがなぜいきなり結婚という話になるのか、彼はゆっくりと事情を話はじめた。 (2023/10/14 15:45:37) |
冬空 | > | 彼は早くに父を亡くし女手1つで育てられたという。そんな母親が病に冒され気落ちしていて元気づけたいとのこと。それが婚約者を紹介して安心させてあげたいとの思いからだったようだ。もちろん少しの間だけ、君には嘘をつかせてしまうことになるけど…と申し訳なさそうにしていた。 (2023/10/14 15:45:50) |
冬空 | > | 他の人には頼めない、私からも断られること前提で何度も悩んだ上のことだったようだ。突然の申し出に驚きと頼ってくれたことが嬉しくもあったもののすぐに返事は出来ずにいた。 (2023/10/14 15:46:03) |
冬空 | > | それから少し経った頃、悩んだ末に承諾の返事をした。彼は驚きながらも嬉しそうにしていた。そして私は婚約者として入院中である彼の母親の見舞いに訪れることとなったのだ。 (2023/10/14 15:46:17) |
冬空 | > | 婚約者として紹介されると彼の母親の嬉しそうな笑顔に嘘をついているという罪悪感で胸が苦しくなる。緊張しているのもあり上手く笑うことができずにいた。彼が部屋を離れ母親と2人きりになれば嘘がバレやしないかとヒヤヒヤしていた。 (2023/10/14 15:46:30) |
冬空 | > | 「ごめんなさいね。息子に頼まれたんでしょ?」彼の母親には全て見透かされていたのだ。彼が戻ると私達は病室を後にした。 (2023/10/14 15:46:45) |
冬空 | > | 「ねぇ…私やっぱりお母さんを騙すようなことなんて…」彼に先程の話をして断ろうとしたのだが…。 (2023/10/14 15:47:03) |
冬空 | > | 「ごめん。やっぱり嘘はダメだよね?俺は君のことが好きだ。君じゃなきゃダメなんだ。結婚を前提に考えてもらえないかな?…」 (2023/10/14 15:47:24) |
冬空 | > | 私を見つめて話す彼の表情は真剣そのものだった。 (2023/10/14 15:47:39) |
冬空 | > | これが最初で最後のプロポーズであった。 (2023/10/14 15:47:51) |
冬空 | > | (2023/10/14 15:47:54) |
おしらせ | > | 冬空さんが退室しました。 (2023/10/14 15:47:58) |
おしらせ | > | 冬空さんが入室しました♪ (2023/10/28 20:45:23) |
冬空 | > | 【お題】「みんな変わってしまうんだ」で始まり、「今なら伝えられる」で終わる物語 (2023/10/28 20:45:33) |
冬空 | > | 3月になれば進学に就職、引っ越しなど新生活への準備やらで慌ただしい時期である。 (2023/10/28 20:46:03) |
冬空 | > | それまで仲良かった友達同士も進む道が変われば今までのようにはいかなくなってしまうだろう。 (2023/10/28 20:46:20) |
冬空 | > | 新生活への不安と期待…それは誰もが感じてきたことだろう。それはこの俺も例外ではなく…。 (2023/10/28 20:46:44) |
冬空 | > | 俺には小さい頃から仲良しの幼馴染みがいた。家も近所で親同士が友達だったということもあり家族ぐるみの付き合いでもあった。 (2023/10/28 20:47:08) |
冬空 | > | いつも一緒に過ごしてきてそばにいるのが当たり前の日常。でもそれも成長すると共に進む道が変われば俺達の関係も変わってしまうのだろうか? (2023/10/28 20:47:22) |
冬空 | > | ずっと一緒にいたい。隣で君の笑顔をみていたい。笑ったり泣いたり、そんな日々を共に過ごしていきたい。 (2023/10/28 20:47:35) |
冬空 | > | いつからだろうか? そんな想いに気づいたのは…。仲良しの幼馴染み、一緒に過ごすことも多かった俺達は周りの友達に『恋人』みたいだとからかわれたこともあった。あの時は恥ずかしさから2人して「ありえない!」と強く否定していた。 (2023/10/28 20:48:05) |
冬空 | > | 俺は君への気持ちに気づいていながらこの関係が壊れることを恐れ告白できずにいたのだ。 (2023/10/28 20:48:18) |
冬空 | > | そんな俺を変えたのは君が交通事故に遭ったとの知らせを受けてからだった。幸いなことに大したケガではないことは聞いていたものの顔を見るまでは気が気ではなかった。入院しているという病院を聞けばすぐに駆けつけた。 (2023/10/28 20:48:42) |
冬空 | > | 病室前の名前を確認すると中に入り、君の姿に安堵すると共に思わず抱きしめていた。「無事でよかった…」 (2023/10/28 20:49:20) |
冬空 | > | 驚いている君の頬に手を添えるとゆっくり顔を近づけじっと見つめていた。ふと我に返り慌てて身体を離して「ごめん…俺なにやってんだ…」 (2023/10/28 20:49:53) |
冬空 | > | ふいに手を引っ張られると頬に触れる柔らかな感触。赤くなった君の顔を見ればそれがなんだったのかはすぐに理解できた。 (2023/10/28 20:50:29) |
冬空 | > | 見つめ合えばお互い微笑んでいた。長い間言えずにいた想い。きっと今なら伝えられる。 (2023/10/28 20:50:46) |
冬空 | > | (2023/10/28 20:50:51) |
おしらせ | > | 冬空さんが退室しました。 (2023/10/28 20:50:55) |
おしらせ | > | 泉狂気さんが入室しました♪ (2023/11/3 05:34:32) |
泉狂気 | > | 【お題】彼のごめんは軽すぎる、から始まり、それすら夢だったようだ。で終わる物語を書いて下さい。 (2023/11/3 05:35:00) |
泉狂気 | > | 彼のごめんは軽すぎる。結婚以来、幾度と無く注意した取り決めも虚しく、下着や靴下はここで脱ぎましたと必要の無い情報を教えるように床に散乱ており、 (2023/11/3 05:35:52) |
泉狂気 | > | 料理を作ってもどんなに手を加えようとも、また、逆に手抜きをしようとも、この人はまるで車にガソリンを給油しているかのように無反応で、スマホの画面に食い入ってはただ咀嚼という動作しかしていないのだ。 (2023/11/3 05:36:02) |
泉狂気 | > | 出張の準備や慶事、法事の際も、どれだけ事前に確認や注意をしても、やはり直前にいつも慌てさせられ、薄っぺらい謝罪の言葉で済まされて終わる。 (2023/11/3 05:36:12) |
泉狂気 | > | この人と一緒になって何年にもなるが、まだ初々しい頃の方が良かった気がする。 (2023/11/3 05:36:23) |
泉狂気 | > | 彼のごめん!は改善されるどころか、過ぎ去った年月に比例して謝罪の項目も回数もどんどん増えていき、その言葉の重さや意味は反比例して一層軽い挨拶程度にまで成り下がってしまった。 (2023/11/3 05:36:35) |
泉狂気 | > | 割と外見には自信があり、若い頃は引く手数多だった私だが、それ程パッとしなかった彼を受け入れたのはその時には誰よりも輝いて見えた彼の誠実さと実直さに惹かれての事だったのだが、 (2023/11/3 05:36:46) |
泉狂気 | > | 御伽噺や童話のように、王子様とお姫様が結ばれてめでたしめでたしで終わるハッピーエンドは、更にその後も続いて行く人生があるこの現実の世では難しいのだと冷めた思いが過ぎる。 (2023/11/3 05:36:57) |
泉狂気 | > | 小さくても良いから、長閑な場所に二人で頑張って屋根裏部屋付きの家を建てよう。休日は時々、お互いの友人を招いてホームパーティーをしよう。その家の周りはおしゃれな花壇と菜園で彩り、山羊を飼いチーズを作り子供の頃の憧れだったハイジのような生活をしよう。 (2023/11/3 05:37:08) |
泉狂気 | > | 結婚前、そんなお互いの共通の夢を語って居たものだったが、大人になってある程度は先が見えて妥協という選択肢が幅を効かせて来るのは誰もが承知の事だろうし、夢は叶わなくても希望として目標となり活力になるからまだ良い。 (2023/11/3 05:37:19) |
泉狂気 | > | だがしかし、私は今別の意味でなんとも言えぬ喪失感に苛まれている。 (2023/11/3 05:37:45) |
泉狂気 | > | 脱ぎ散らかされた下着や服の主について、料理よりも夢中になって凝視していた彼のスマホが不用意にも開いたままの状態で、私に揚々と浮気相手との下品なやり取りを面白そうに告げ口して来たのだから。 (2023/11/3 05:37:57) |
泉狂気 | > | 「僕は君が好きなんだ!僕の取り柄は真面目な所しかないけれど誓って絶対に浮気をしたり君を悲しませる事はしない!どうか僕と結婚してください!」 (2023/11/3 05:38:08) |
泉狂気 | > | あの時の私がパッとしなかった彼に見出した、唯一の誰にも無い長所。真面目で誠実で実直な青年。どうやら、それすら夢だったようだ。 (2023/11/3 05:38:19) |
泉狂気 | > | ^ - ^ (2023/11/3 05:38:31) |
おしらせ | > | 泉狂気さんが退室しました。 (2023/11/3 05:38:32) |
おしらせ | > | 冬空さんが入室しました♪ (2023/11/4 20:32:38) |
冬空 | > | 【お題】「去年の花火は綺麗だった」で始まり、「信じてもいいですか」で終わる物語 (2023/11/4 20:33:06) |
冬空 | > | 去年の花火は綺麗だった。付き合ってからはじめての花火大会。俺達は駅前で待ち合わせをして会場に向かったんだ。 (2023/11/4 20:33:27) |
冬空 | > | 周りは家族連れやカップルで賑わっている。そんな人混みの中、はぐれないように俺は君の手をぎゅっと握って高台へと歩いていた。 (2023/11/4 20:34:00) |
冬空 | > | 会場から少し離れているせいか人はそれほど多くもない。高台の為よく見渡せる場所で本会場よりは静かである。 (2023/11/4 20:34:15) |
冬空 | > | 俺達は石段に並んで座ると夜空を見上げていた。真っ暗な夜空に何度も大きな音と共に大輪の花が煌びやかに咲いていく。その美しさに見入っては「きれい…」と思わず同時に呟いていた。 (2023/11/4 20:34:32) |
冬空 | > | 俺は花火よりも君の横顔に見惚れていた。ずっと君と一緒にいたいと思いながら…。すると視線に気づいた君が俺を見るから目があってしまった。 (2023/11/4 20:35:03) |
冬空 | > | 俺達は少し照れながらも軽く口づけを交わすと再び花火に視線を向けていた。そして俺はぎゅっと君の手を握ったまま心の中で呟いた。また来年も君と一緒に花火を見れるって信じてもいいですか。 (2023/11/4 20:35:24) |
おしらせ | > | 冬空さんが退室しました。 (2023/11/4 20:35:43) |
おしらせ | > | 尊き人へさんが入室しました♪ (2023/11/17 09:20:15) |
尊き人へ | > | 【プロローグ】もうかれこれ数年前の出来事ですが、とある葬祭会館で働いていた時偶然耳にした、余りにも美しい生き方を成されたとあるご婦人の物語を今でも忘れられなくて、こうして語り継ぎ残そうと思いたちました。 (2023/11/17 09:20:30) |
尊き人へ | > | その日は大勢のお見送りの方がご焼香に見えられてたのだけれど、殆どの方が30代半ば程だったので「あぁ、不憫にも今日送られる方は若くして亡くなられたのだな」と、優しい笑みを浮かべる綺麗な顔立ちの遺影に目をやりました。 (2023/11/17 09:20:43) |
尊き人へ | > | 時はコロナによる制限の始まった真っ只中で、個人はコロナで亡くなった訳では無いのだけれど当然大人数での集団は避ける情勢の中、それでも会館内だけでなく沿道や近辺に分散しながらも葬儀に集まった人の数は、同窓会でも集まらないような余りにも多い数から故人の人望を想像するのは容易でした。 (2023/11/17 09:20:58) |
尊き人へ | > | そんな尊いエピソードを数篇、お話しさせて頂きたく思います。 (2023/11/17 09:22:57) |
尊き人へ | > | 【第一話・思い出の万年筆】しめやかな時がゆったりと優しく流れる中、十数人程で固まっていたグループで何故か一人の婦人が手にした万年筆を皆で感慨深げに涙し、愛おしそうに触れる姿が目に入ったので気になり耳を澄まして彼女達の話に耳を傾けました。 (2023/11/17 09:23:11) |
尊き人へ | > | 亡くなったA子さんと、この万年筆を手にするB子さんは同じ高校で、県内に及ばずその地方でも一番の偏差値を誇る名門の女子校で二年の時の同級生だったそうです。 (2023/11/17 09:23:28) |
尊き人へ | > | A子さんは出身の小、中でも有名な人気者で常に周りに人の輪が出来るような明るく社交的な性格、それに対して一方のB子さんは内気で大人しい性格で、小さい頃に両親が離婚して母の手一つで育てられ生活も厳しく、いつも卑屈で目立たぬようにビクビクしていた子供でした。 (2023/11/17 09:23:54) |
尊き人へ | > | その所為か、友達も多く家も裕福で恵まれているA子さんとクラスが同じくなった時は自分をより惨めに感じてしまい、あまり好んで関わらないようにしていました。 (2023/11/17 09:24:04) |
尊き人へ | > | ところが何故か、B子さんが避けたいと思ってもA子さんの方からよく声をかけて来ては行事や学業で、何かとグループ分けをする時にB子さんを気にかけているのを感じていたそうで、B子さんはそれを鬱陶しく感じて反発していたのですが (2023/11/17 09:24:14) |
尊き人へ | > | A子さんからの好意は決して押し付けでも嫌味や劣等感を感じさせるものでも無く、それが仲の良い友達も居らずいつも卑屈にポツンと孤独で、まるでハブられているようなB子さんに対して心から仲良くしたい、友達になりたい、みんなで一緒に楽しくしたいという純粋な優しさだと気がついてB子さんも少しずつA子さんに心惹かれていったのでした。 (2023/11/17 09:24:25) |
尊き人へ | > | そうしてB子さんに仲良くちょっかいをかけてくれるのはA子さんくらいしか居ない中、クラスでは修学旅行も近づき、行動を共にするグループ分けを決める運びとなった頃、 (2023/11/17 09:24:36) |
尊き人へ | > | A子さんから一緒に旅行したいから同じグループなりたいな、B子さんも誘っても良いかな?と相談されました。他に親しい友達も居ないB子さんは軽く良いよ、と返事をしたのですが、 (2023/11/17 09:24:47) |
尊き人へ | > | どうせ人気のある人から選ばれるんだし自分はミソッカスなんだから好きにしたら?と内心冷めていた中、グループのリーダーであるA子さんが真っ先に誘ったのはB子さんでした。 (2023/11/17 09:24:58) |
尊き人へ | > | 更にA子さんの密かな計らいで、友達も無く人見知りだったB子さんの同じ班のグループは、そんなB子さんでもまだ比較的話しやすいクラスメイト達で固められ、本心では行きたくないと思っていた修学旅行がいつしか待ち遠しく感じていたそうです。 (2023/11/17 09:25:09) |
尊き人へ | > | そんな修学旅行の時、更なる忘れる事の出来ない一生の思い出が生まれました。 (2023/11/17 09:25:20) |
尊き人へ | > | 修学旅行というものは一番の楽しみの自由行動等て外食をしたり、アミューズメントパークで遊んだりと何かとお小遣いが飛んで行く行事ですが、貧しかったB子さんは母に遠慮して余り小遣いを使わず、友達との楽しい旅行であっても金銭面では裕福な友達との差にナーバスになっていたのですが、 (2023/11/17 09:25:32) |
尊き人へ | > | そんなB子さんの不安を他所に、外食でも入館料でも、事ある毎にA子さんが「私はお金持ちだからみんなに奢ってあげるわよ!」と、ややもすれば鼻につくようなセリフをおどけた芝居がかった感じで微笑んで、全てのお金を出してくれました。 (2023/11/17 09:25:44) |
尊き人へ | > | その時B子さんも、おそらく同じグループの友達もみんな気がついたそうです。普段は控えめで決して威張ったり見栄を張ったりしない細やかな気遣いのA子さんがこんな事をする理由を (2023/11/17 09:25:55) |
尊き人へ | > | きっと、経済的にゆとりの無いB子さんの為にこんなふざけながらも偉ぶった態度をしてわざと笑わせ、友達に気を遣わせないようにさりげなく優しい施しをしているのだと (2023/11/17 09:26:06) |
尊き人へ | > | それはお金を出すのがB子さんの分だけでは無く、グループの友達全員分というところに皆は感じたそうです。もしB子さんのだけお金を出すような事をしたら、B子さんを惨めな気持ちにさせたり、B子さんにだけ引け目を感じさせてしまう。それよりもグループ全員に威張って、女王様キャラでおどけて笑い変えてしまうのがA子さんなのです。 (2023/11/17 09:26:17) |
尊き人へ | > | そんなA子さんの優しさがお金などのモノでは無く、真心なのだと確信したのはその日の晩の事でした。 (2023/11/17 09:26:29) |
尊き人へ | > | 嘗てA子さんと雑談でお互いの事を色々話して、何気なくそこでB子さんは中学まで百人一首をやっていて得意なのよと口にしたのですがA子さんはそれをちゃんと覚えていて、修学旅行に百人一首をわざわざ買って持ってきていたのです。 (2023/11/17 09:26:40) |
尊き人へ | > | 就寝前の夜の楽しい時間はムードメーカーのA子さんがこれで遊ぼう! と率先する事で賑やかな百人一首大会になりました。B子さん以外は皆未経験者ばかりでしたがA子さんのキャラで場は盛り上がり、経験者で強いB子さんは主役となりいつの間にか自然と沢山の友達と打ち解けて、B子さんの学生生活はその晩を境に変わったそうです。 (2023/11/17 09:27:01) |
尊き人へ | > | 家庭の事情が無ければ元々のB子さんは明るく社交的な方だったのかも知れません。修学旅行での百人一首大会がきっかけで見違えるように性格も変わり、A子さんのお陰で一気に生涯の友達が増えました。 (2023/11/17 09:27:13) |
尊き人へ | > | それから数年、B子さんはストレートで大学も出て、大きな市の役所に就職も決まり初めてボーナスが支給された時、これまでずっと心に決めていた計画を実行する事にしました。 (2023/11/17 09:27:23) |
尊き人へ | > | それは、B子さんの人生を変え、卒業後もずっと変わらぬ熱い友情で支えてくれるA子さんへの恩返しの計画でし (2023/11/17 09:27:37) |
尊き人へ | > | 実は修学旅行の帰りにB子さんへ、「おばさんにいつも優しくして貰ってるからお礼に渡してね!」と沢山のお土産までくれたA子さんへ、いつか私が働くようになったら初ボーナスで、夢だったフランス料理のフルコースをA子さんにも一緒に贅沢に味わって欲しいと考えていたのです。 (2023/11/17 09:27:48) |
尊き人へ | > | A子さんに連絡をとって誘いましたが、奥ゆかしくて遠慮深いA子さんからはその分お母さんを喜ばしてあげてとか、そんな昔の事なんて覚えてないし、私は女王様みたいに威張ってチヤホヤされたかっただけなのに、等と如何にもA子さんらしい遠慮で辞退されたのですが、 (2023/11/17 09:28:00) |
尊き人へ | > | 根気強く何度も何度もお願いするとついにA子さんも折れて、それじゃあご馳走様になろうかな?と照れ隠しを浮かべて承諾してくれました。 (2023/11/17 09:28:19) |
尊き人へ | > | B子さんはあの時のA子さんへの気持ちで胸がいっぱいで、そんなB子さんの気持ちをA子さんに感謝で告げると「そんな大した事でも無いのに、こんなに思ってくれてありがとう」と、A子さんはキラキラと涙を流されたそうです。 (2023/11/17 09:28:52) |
尊き人へ | > | 食事会も終わって帰り間際、鞄からA子さんが綺麗に包装された小箱を手渡してB子さんの目を見つめました。 (2023/11/17 09:29:05) |
尊き人へ | > | 「今夜は会えて、こんなに贅沢なご馳走を頂けて凄く嬉しいかったよ。少し遅くなったけれど、これは私からB子さんへの感謝を込めた、就職祝いだから笑顔で受け取ってね」と、驚くB子さんを煙に巻くように、昔から変わらぬ冗談好きで明るいムードメーカーのA子さんはニッコリ微笑むと手を振って車中に消えました。 (2023/11/17 09:29:26) |
尊き人へ | > | 家に着きはやる気持ちでB子さんが箱を開けると、直筆のメッセージで今夜の食事に招待されたことがどれだけ嬉しかったことかが、昔の楽しかった思い出と共に丁寧にびっしり書き込まれていて、そこには明らかに食事代よりも高い万年筆が光っていました。 (2023/11/17 09:30:04) |
尊き人へ | > | この万年筆がB子さんの一番の大切な宝物となり、それ以来A子さんへの手紙や特別な時にだけ、この万年筆をそれは大事に使うようになりました。 (2023/11/17 09:31:02) |
尊き人へ | > | そしてA子さんを不本意にも送らねばならなくなったこの日。震える手に涙を落としてこの万年筆で記帳をしたのでした。 (2023/11/17 09:31:49) |
尊き人へ | > | このA子さんとの万年筆の思い出はB子さんにとって大切なもので、口にすると軽くなる気がして十年以上ずっと誰にも語らず胸にしまっていたのでしたが、A子さんを慕い集まった多くの友達に初めてその秘話を明かすと、 (2023/11/17 09:32:07) |
尊き人へ | > | 話を聞いた皆全員がA子さんらしいよねと頷いては涙を溢れさせ、尊い人柄をしみじみと想い、偲びました。 (2023/11/17 09:33:28) |
おしらせ | > | 尊き人へさんが退室しました。 (2023/11/17 09:33:47) |
おしらせ | > | 尊き人へさんが入室しました♪ (2023/11/21 13:35:02) |
尊き人へ | > | 【第二話・扇の要】今回はC子さんより。彼女の父親はよく言う転勤族といった、全国にある支店や営業所を異動して渡るサラリーマンでした。 (2023/11/21 13:35:08) |
尊き人へ | > | なので当たり前のように2〜3年くらいで引っ越しがあり、体操着の色や上靴の色の全く異なる学校へ転校を繰り返す気の毒な小学生時代でした。 (2023/11/21 13:35:20) |
尊き人へ | > | 普段から耳に入る両親の故郷の方言が生まれた時より自然と染み込んだC子さんなので、転校する度にその言葉遣いすら格好のからかいの対象となり、毎回他所者排除的なイジメの洗礼を受けていました。 (2023/11/21 13:35:31) |
尊き人へ | > | 小さい頃はただ泣いてばかりのC子さんでしたが、ある時ふとしたきっかけでキレると、自分は暴力という力では相手を圧倒出来る強者側である事に気がついてしまいました。 (2023/11/21 13:35:41) |
尊き人へ | > | イジメから解放されたとは言え、それで友達と仲良くなれた訳ではなく、鰯の群れの中で鮫になってしまったC子さんは、クラスの人達が遠巻きに避けるような近寄り難い存在へと変わりました。 (2023/11/21 13:35:58) |
尊き人へ | > | そしてそんな現状をC子さんは逆手に取り、最初から舐められないようにすれば面倒な関わりも無くなるだろうと安易に考え、父親譲りで血の気の多い気質だった事もあり、いつの間にかグレて悪い仲間達とばかり連む不良へとなり果てたのです。 (2023/11/21 13:36:16) |
尊き人へ | > | そんなC子さんに転機が訪れたのは中学二年の時でした。親の仕事で遠い地方へ転校が決まったその頃のC子さんは、髪は当時の不良でもまだ珍しい金色に染め上げ、常に身体からタバコの匂いを撒き散らす問題少女になってました。 (2023/11/21 13:36:32) |
尊き人へ | > | 初登校の日に学校へ向かうと、平和な地方の田舎のせいもあってか異様な出立ちのC子さんは悪目立ちし、校内はおろか通学途中でも自分に気がつく人達は皆、大人達でさえ関わりたく無いとばかりに目を逸らす有様で、C子さんは常にざわついている空気に包まれたそうです。 (2023/11/21 13:36:49) |
尊き人へ | > | 教師達には既に前の学校での事やこれまでの申し送り等の通達はあったのでしょう。担任となる教師達の強張った作り笑顔に迎えられ、自分が編入された教室へと連れられて行くと、やはりクラス生徒の全員がまるでメドゥーサに見つめられたように固まり、引きつった顔に一瞬空気が止まりました。いえ、全員では無く、一人を除いて。 (2023/11/21 13:37:02) |
尊き人へ | > | そのたった一人の例外の少女は、一瞬だけ金髪のC子さんにポカンとした顔をすると、他の生徒達は目が合うたびに視線を背けるのに対して目が合っても変わる事なく、興味深そうにC子さんをじっと見つめていました。 (2023/11/21 13:37:16) |
尊き人へ | > | 直感的にこいつは目障りな奴だ!この少女とは関わらない方が良いとC子さんは感じたようですが、皮肉な事に相手はクラスの委員長で、嫌でも転校生のC子さんが慣れるまで学校案内や決まり事を教える係だったのでした。 (2023/11/21 13:37:26) |
尊き人へ | > | これまでの学校ではそんな役目だった同級生達は皆例外無く、まるで腫れ物に触れるようにビクビクと変な敬語を使い、一方的に何か早口で語ると教える役目を終えたとばかりに脱兎の如く逃げるような人達ばかりでしたが、 (2023/11/21 13:37:37) |
尊き人へ | > | この少女は違いました。きめ細やかに丁寧な説明をする彼女が疎ましくて、C子さんが苦々しくあさっての方を向いて聞いてないふりをすると、視線の方に身体を移動して顔を掴み、「ねぇ、聞いてる?わかったかわからないか返事してくれないと私、教えられたか解らないよ!」とズケズケと不良のC子さんに全く動じる事も無く言ってのける人だったのです。 (2023/11/21 13:37:51) |
尊き人へ | > | ずっと長年グレた不良キャラを染み込ませてしまったC子さんは今更態度を変える事が出来ず、この少女にきつい睨みや高圧的な態度で威圧し、反抗的な態度を取り続ける事しか出来ませんでした。 (2023/11/21 13:38:06) |
尊き人へ | > | C子さんが転校して何ヶ月か過ぎた頃に見えて来たのは、このクラスはこれまで見てきたどの学校よりもまとまりがあり、クラス内はイジメとは無縁でクラス全員が皆仲の良い非常に珍しいクラスという事で、男女で差別したり冷やかしたり小さく小グループでまとまるのが普通だった昔の学校では珍しいクラスでした。 (2023/11/21 13:38:18) |
尊き人へ | > | そのクラスの要となり、生徒達全員から厚く信頼されて強力な接着剤となりまとめていたのが、このクラス委員長であるA子さんだったのです。 (2023/11/21 13:38:30) |
尊き人へ | > | この学校へ来て暫くしたある時、ムシャクシャしていたC子さんは、このクラスの中で一番無口で大人しく内気な同級生の一人にちょっとしたきっかけから八つ当たりをし、因縁をつけて喧嘩をふっかけてしまいました。 (2023/11/21 13:38:42) |
尊き人へ | > | みんな遠巻きに見ているだけの臆病者の群れ。これまではどの学校でもクラスでも同じで、誰一人C子さんに楯突く者など居りませんでしたが、そんなC子さんは不意に罵声を浴びせられると、突然頬に衝撃が走りました。 (2023/11/21 13:39:12) |
尊き人へ | > | 思いがけない展開に驚くC子さんの目に映ったのは、いつも和かに笑顔で笑ってる顔しか見たことのないA子さんの怒りに震えた顔でした。 (2023/11/21 13:39:22) |
尊き人へ | > | 一方的に弱いもの虐めのように暴力を振るったC子さんに、まるで容赦の無い非難を浴びせたA子さんは恐れる事なく再度平手打ちを食らわせて来ました。 (2023/11/21 13:39:35) |
尊き人へ | > | 全く予期していなかった為に最初は迫力に気圧されて怯んだものの、喧嘩慣れしているC子さんはすぐに形勢を逆転し、今度はA子さんに馬乗りになって何度も顔を殴りつけては「なんだテメェ!謝れよこの野郎!」と怒鳴り声を上げたのですが、 (2023/11/21 13:39:50) |
尊き人へ | > | 「謝るのはあなたの方でしょ!あなたみたいな卑怯者に私は絶対に謝らない!」と、鼻血を流し口を切っても決して心を折らないA子さんの毅然と非難する姿に、自分が悪いと自覚していたC子さんは内心気持ちで完全に負けたと敗北を悟りました。 (2023/11/21 13:40:02) |
尊き人へ | > | とその時、それまで遠巻きに心配してオロオロしていただけの他の生徒達がついに、A子さんを助ける為次々と加勢に入りC子さんにキックやパンチで襲いかかったのですがまたもや意外な声がそこに割って入りました。 (2023/11/21 13:40:16) |
尊き人へ | > | それは、馬乗りされて殴られているA子さんでした。「みんなやめて!これは私と彼女の喧嘩だからみんなは手を出さないで!」という、心に響く堂々たる凛とした声でした。 (2023/11/21 13:40:37) |
尊き人へ | > | 思わぬA子さんの願いに、加勢しようと群がって来た生徒達も動揺して思考が一瞬停止したようでその隙にC子さんは逃げるように教室を飛び出してそのまま帰宅してしまいました。 (2023/11/21 13:40:58) |
尊き人へ | > | 教室から飛び出したのは逃げたかったからだとC子さんは自覚していました。卑劣にもムシャクシャしてつい弱い者虐めをしてしまった自分が情け無くなった上にA子さんの毅然と振る舞った姿に恥じてそのまま家に閉じこもり、不登校となったのです。 (2023/11/21 13:41:10) |
尊き人へ | > | C子さんはその後、転校でも登校拒否でもどうせ一年適当にやり過ごせば義務教育を終え、そうすれば自分で人生を好き勝手に生きて行けると投げやりに、ただ時間が早く流れる事ばかり願ってました。 (2023/11/21 13:41:21) |
尊き人へ | > | でも、そんな堕落したC子さんの考えに邪魔をして、放っておいてくれない存在が居たのです。 (2023/11/21 13:41:34) |
尊き人へ | > | 「ちゃんとやっておいてよ?わざわざ面倒臭いノートまで写して書いてあげたんだからね?」そう朗らかにノートを手渡すA子さんでした。 (2023/11/21 13:41:44) |
尊き人へ | > | クラス委員長という立場の為担任から各連絡のプリント等を届ける役を押し付けられた彼女は、委員長の仕事とは別に、受験を見据えて授業の要点やメモ等をこまめに、率先してC子さんの為に善意でノートを買っては毎日毎日まとめてくれていたのです。 (2023/11/21 13:41:55) |
尊き人へ | > | このA子さんの無償の善意に、あんな喧嘩で何度も殴ってしまったC子さんは後悔しました。でも今更合わす顔もなくどう謝罪して償えばいいのかさえわからなかった彼女の心を時間が少しずつ溶かし、C子さんに変わらず心砕くA子さんへ、いつの間にか自然に心を開いていました。 (2023/11/21 13:42:28) |
尊き人へ | > | いつものようにノートを持って来てくれたA子さんを初めて部屋に招き入れ、真っ先にこれまでの事を心から謝罪をすると、A子さんは嬉しそうな顔をしながらも「あなたが謝らなきゃいけないのは私じゃ無く、あの時あなたが虐めた相手でしょ?」と白い歯を見せました。 (2023/11/21 13:42:42) |
尊き人へ | > | その屈託ない笑顔のA子さんの人柄にC子さんはその時、全身に電気が走ったような衝撃で感動を覚えたそうです。 (2023/11/21 13:43:08) |
尊き人へ | > | そして素直な心で悔いて反省したC子さんは、今まで転校の度に虐められてきた事やこれまでの理不尽な境遇で屈折した気持ちを正直に話すと、彼女は真剣な眼差しで聞き入り、C子さんのやさぐれた言動を心配して親身になってアドバイスしてくれました。 (2023/11/21 13:43:20) |
尊き人へ | > | 「先ずは学校においでよ!私もあなたが笑顔になれるように協力するから! 不思議と信じてしまえるA子さんの励ましに後押しされたC子さんは勇気を出して数日後、髪を黒く戻し制服も正規の企画のを買いなおし、ガラリと姿を変えて登校しました。 (2023/11/21 13:43:36) |
尊き人へ | > | クラスでは既に委員長のA子さんがそれとなく自然に根回しをしていたようで、教室に入ったC子さんは真っ先に虐めてしまった相手に謝罪をすると、相手の子も笑顔で握手をして、見守っていたクラスメイト達からは拍手が起きました。 (2023/11/21 13:43:52) |
尊き人へ | > | 勇気を出して謝罪したC子さんをその後はA子さんが誘って沢山のクラスメイト達と交流し、あっという間に仲の良い友達が増え、その時にこのクラスを見た時の皆の纏まりの良さ、団結力や仲の良さの正体がA子さんの人望なのだと改めて理解しました。 (2023/11/21 13:44:03) |
尊き人へ | > | 楽しい中学生活も過ぎ、高校では学力の差があって残念ながらA子さんとは同じ高校には行けませんが、それでもA子さんのお陰でいつの間にか高校に進学する道を選ぶ気持ちに変えられていたそうです。 (2023/11/21 13:44:19) |
尊き人へ | > | 古来より竹馬の友という永く繋がる友情の言葉がありますが、A子さんの優しい人柄や誠実な生き方は、まさにそんな絆の強さを見せてくれました。 (2023/11/21 13:44:47) |
尊き人へ | > | 高校生になっても社会人になっても切れる事は無く、逆に新しい出会いの分どんどん膨れ上がる友達の輪が広がり続け、同級生でもない違う学校だった人達とも、共通の友達である扇の要・A子さんのお陰で、結婚した後の今でも多くの友達とは定期的に顔を合わせ、家族ぐるみで付き合う強い絆で結ばれて居ました。 (2023/11/21 13:45:30) |
尊き人へ | > | 残念な事に初めての出会いから20年程過ぎ、突然辛い別れの時が訪れまてしまいました。 (2023/11/21 13:46:34) |
尊き人へ | > | 病で避けられぬ死を自覚していたA子さんが最後に友人達へ送ったメッセージには「私は悔いの無い幸せな人生だったから最後も笑顔で皆んなを迎えるね。だから皆んなも私を笑顔で見送ってね。」と残されていたそうです。 (2023/11/21 13:48:22) |
尊き人へ | > | A子さんを送る日、コロナ禍で制限されている中でも自発的に少数に別れ、広く場所を分散して他人に迷惑が掛からぬよう配慮しながらも集まった大勢の友達の為に時間がかかり、C子さんがやっとA子さんとの最後の対面を果たした時。激痛で苦しく辛い病だったのにも関わらず、メッセージの通り棺の中でA子さんは微笑んでいました。 (2023/11/21 13:48:41) |
尊き人へ | > | その笑顔に出会った頃のA子さんがフラッシュバックし、数え切れない程の尊い思い出に襲われたC子さんは人目も憚らずに、A子さんの名を叫び続けました。 (2023/11/21 13:49:42) |
おしらせ | > | 尊き人へさんが退室しました。 (2023/11/21 13:50:03) |
おしらせ | > | 尊き人へさんが入室しました♪ (2023/11/21 20:55:26) |
尊き人へ | > | 【第三話・お弁当】D子さんがA子一緒のクラスだったのは小学校三年生と四年生のたった2年間だけなのに、それから何十年もずっと濃い友人関係を続けていました。 (2023/11/21 20:55:43) |
尊き人へ | > | 3年生の時、初めてA子さんと一緒になり顔を合わせたD子さんでしたが、いつも楽しげに友達と賑やかに振る舞うA子さんは目立つ存在で、実は一方的に気になっていて意識していたそうです。 (2023/11/21 20:55:55) |
尊き人へ | > | なのでD子さんは同じクラスになれたのが嬉しくて、自ら積極的にA子さんに近づき、社交的な彼女とすぐに仲良く友達になれました。 (2023/11/21 20:56:05) |
尊き人へ | > | D子さんは理想の憧れのようなA子さんが大好きで、班分けで違う班にされるとふて腐れ乍も、それでも共同研究や運動会、社会科見学や遠足の時は我先にA子さんの元に走って飛び込んで来ました。 (2023/11/21 20:56:22) |
尊き人へ | > | 社交的なA子さんは友達が多く人気者の為に軽く奪い合いのようになるので、いち早くA子さんの近くを確保しなければならなかったからです。 (2023/11/21 20:56:32) |
尊き人へ | > | そんな中楽しみだった行事の一つ、遠足ではお昼のお弁当をA子さんと一緒に食べる約束を交わす事が出来て、まだまだひと月以上も先だというのにD子さんは嬉しくて毎日待ち遠しく夜を数えたそうです。 (2023/11/21 20:56:42) |
尊き人へ | > | ところが。 突然まさかの事態が起きました。D子さんのお兄さんが耳鼻科で急遽入院して手術を要する事態となり、D子さんのお母さんも病院にずっと付き添う事となったのです。 (2023/11/21 20:56:52) |
尊き人へ | > | D子さんはお兄さんの心配も勿論ありましたが、同時に楽しみだった遠足やお弁当の事が心配になりました。 (2023/11/21 20:57:04) |
尊き人へ | > | その当時のD子さん達の時代は仲良しグループが敷物を繋げてまとまって、お互いにおかずを交換したりして一緒に食べるのが普通だったので、パンやコンビニ弁当を持って行く自分の姿を想像して不安になりとても悲しくなったのです。 (2023/11/21 20:57:17) |
尊き人へ | > | 誰にも何も話す事が無かったD子さんでしたが、悩んでいた彼女にいち早く気がついた人が居ました。 それは、幼稚園から一緒だった友達でも、生まれた頃からずっと近所の幼馴染でも無く、同じクラスになったばかりのA子さんでした。 (2023/11/21 20:57:37) |
尊き人へ | > | 沢山の友達が集まりワイワイしている時には何の素振りも見せなかったA子さんが、D子さんが掃除当番の時にそっと近づいて声をかけ、「少し時間あるかな?」と帰りに待ち合わせで呼び出したのでした。 (2023/11/21 20:57:49) |
尊き人へ | > | まさか悩んでいる自分に気がついているとも思わなかったD子さんは、最初は突然どうしたの?と不安を隠してましたが、「最近明らかに様子が変わったし元気がないよ?私で良かったら話し相手になりたいの。」と真剣な眼差しで見つめられ、正直にA子さんに打ち明けました。 (2023/11/21 20:58:03) |
尊き人へ | > | 話を聞きお兄さんの心配に涙ぐんだ後、あなたさえ良ければとA子さんから提案を申し入れてくれました。 (2023/11/21 20:58:13) |
尊き人へ | > | それは、D子さんのお弁当をA子さんのお母さんに一緒に作ってもらう、という提案でした。 D子さんはこの申し出に恐縮して遠慮したのですが、内心嬉しい気持ちを察したようにA子さんが笑顔で「決まり!お弁当一緒に食べようね!」と強引に両手を包みました。 (2023/11/21 20:58:23) |
尊き人へ | > | その日の帰りはA子さんは帰り道が別なのにいつも一緒に帰る友達に断りを入れて、D子さんと2人仲良く歩きながら、D子さんが好きな食べ物を根掘り葉掘り楽しい雑談を交えながら笑顔で帰りました。 (2023/11/21 20:58:34) |
尊き人へ | > | 「遠足の日は美味しいお弁当用意するから安心してね!」その言葉通り、遠足当日の朝少し早い時間にわざわざD子さんの家までやって来たA子さんは満面の笑みでお弁当を渡すと「また後でね!」と楽しげに帰って行きました。 (2023/11/21 20:58:45) |
尊き人へ | > | 遠足は天気にも恵まれ、A子さんとも更に親密になれて忘れられない楽しい思い出となったのですが、後々D子さんが成長するにつれその楽しい思い出を思い出す度、当時は気がつかなかったA子さんの優しさに改めて気付かされたのです。 (2023/11/21 20:58:58) |
尊き人へ | > | わざわざ早朝に、別方向のD子さんの家にお弁当を届けに来た事や、わざわざちゃんとD子さんのお弁当箱を使って用意してくれた事。 (2023/11/21 20:59:09) |
尊き人へ | > | そしてあの時、D子さんのお弁当はD子さんが好きなミートボールやイカリングが詰まって、果物に至っては贅沢で親にせがんでも入った事のないさくらんぼが溢れていた事。 (2023/11/21 20:59:20) |
尊き人へ | > | そしておかずを他の友達と交換し合う時、そういえばA子さんは唐揚げか何か、記憶は定かでは無いが明らかにD子さんとは全く違う別のおかずのお弁当だった事。 (2023/11/21 20:59:43) |
尊き人へ | > | A子さんの親からしたら、同じおかずをまとめて作った方が楽だった筈なのにそれをわざわざ、手間ひまかけて全く別の弁当を作ってくれたのだ。 (2023/11/21 20:59:55) |
尊き人へ | > | 大人になってから機会があってA子さんにこの事を話し、改めて感謝の気持ちを伝えると、A子さんはケロッとして、 (2023/11/21 21:00:10) |
尊き人へ | > | 「私、料理に興味あるから作りたくて。でも子供だし一人で無理だからお母さんにかなり手伝ってもらったけど、あれ、実は私も手伝って作ったんだよ!」 (2023/11/21 21:00:31) |
尊き人へ | > | 「だからあなたは私の実験台で利用されていただけだから、全然気にしないで良いのよ?」とまたいつもの笑顔で歯を溢しました。 (2023/11/21 21:00:55) |
尊き人へ | > | でもD子さんは勿論知ってました。 周りの友達には全く気が付かれないように、自然にお弁当を持ってD子さんが遠足に行くために早朝届けに来た事を (2023/11/21 21:01:15) |
尊き人へ | > | だからわざわざ、D子さんの弁当箱を取りに来て、それを使ってくれた事を (2023/11/21 21:01:36) |
尊き人へ | > | 少しでも楽しい思い出になるように、大好物のおかずを材料費や手間暇をかけてもA子さんのとは別のおかずを作ってくれた事を (2023/11/21 21:01:57) |
尊き人へ | > | そして何よりも、その面倒を母親だけに押し付ける事なく、A子さん自ら大変な料理を頑張って作ってくれた事を (2023/11/21 21:02:27) |
尊き人へ | > | 案の定、A子さんの葬儀で集まった当時の級友にこの話を打ち明けても、D子さんのお弁当にそんな秘話があった事に気がついていた人は誰一人居ませんでしたが、 (2023/11/21 21:02:46) |
尊き人へ | > | A子さんという人は、そんな奥ゆかしい優しさや愛情に溢れていた事をこの話を聞いた友人達全員が知っていました。 (2023/11/21 21:03:53) |
おしらせ | > | 尊き人へさんが退室しました。 (2023/11/21 21:03:59) |
おしらせ | > | 尊き人へさんが入室しました♪ (2023/11/22 00:20:07) |
尊き人へ | > | 【第四話・昆虫採集】E子さんには少し歳の離れた弟がおりました。 親から弟の面倒を押し付けられていたE子さんは、この弟を連れて遊びに行くのを鬱陶しく、いつも邪魔に思っておりました。 (2023/11/22 00:20:24) |
尊き人へ | > | 小学校でA子さんと同じクラスで出会い友達になったE子さんは仲良くなって、そこから沢山の友人達とA子さんの家に集まって遊ぶ事が多くなりました。 (2023/11/22 00:20:38) |
尊き人へ | > | A子さんはご両親の方針でテレビゲームも漫画本も禁止されていましたが、いつまでも飽きる事の無い楽しい博識なお喋りやボードゲーム、小説や音楽、それとA子さんのお母さんが教えてくれるお菓子作りや手芸の虜となってE子さんには毎日が楽しくて、いつもA子さんにくっついて遊んでいました。 (2023/11/22 00:20:51) |
尊き人へ | > | 当然、親に預けられた弟のF男君もミソっかす扱いでE子さんは嫌々連れて行かねばなりませんでしたが、そんなE子さんを気兼ねさせる事なくいつでもA子さんが面倒を見て、 (2023/11/22 00:21:02) |
尊き人へ | > | 一人っ子のせいなのか元来の母性的な優しさなのか、嫌な顔を見せる事無くF男くんを実の弟のように可愛がり、他の友達にも気配りをしながらもゲームや料理、手芸で遊ぶ輪には加わらずに、飽き性で我儘な年頃の幼いF男君につきっきりで遊んであげていたそうです。 (2023/11/22 00:21:15) |
尊き人へ | > | 数年が経ち、E子さんは中学二年となり部活や受験に向けた勉強で以前のように友人達と遊ぶ機会もめっきり少なくなった頃、 (2023/11/22 00:21:29) |
尊き人へ | > | F男君はやんちゃ盛りの小学生になっていて、毎日友達とゲームや冒険ごっこで遊んでおりました。 (2023/11/22 00:21:39) |
尊き人へ | > | 丁度夏休みに入る頃でした。 F男君はお父さんと休みにカブトムシを捕まえに行く約束をしたのですが、お父さんが急用で行けなくなってしまうと、F男君は拗ねて家の中で駄々を捏ねて暴れました。 (2023/11/22 00:21:50) |
尊き人へ | > | 最初はF男くんに同情して慰めていた母親やE子さんも、益々調子に乗って騒ぐF男くんに構う事をやめて放ってしまうと、収まりがつかなくなったF男君はそのまま家を飛び出して行きました。 子供特有の浅はかさで、そのまま家出を心配させて家族を困らせたかったようです。 (2023/11/22 00:22:06) |
尊き人へ | > | あてもなく繁華街から駅の方へ歩いていると、偶然A子さん家族と出会いました。 気さくにA子さんが話しかけると、気まずさとやり場のない不満とでA子さんにあたるように悪態をついてしまうF男くんでしたが、 (2023/11/22 00:22:17) |
尊き人へ | > | 何か様子がおかしいと気になったA子さんはお母さんと別れ、F男君と一緒に帰る旨を伝えて一人残りました。 (2023/11/22 00:22:27) |
尊き人へ | > | F男君は内心嬉しい気持ちの反面、悪態をつく恥ずかしさと申し訳なさとで不思議な気持ちになりましたが、もう後にも引けなくなったのでA子さんを無視して駆け足で逃げようとしましたが、 (2023/11/22 00:22:39) |
尊き人へ | > | 「お姉ちゃんはね?凄く足が早いんだよ!」と、茶目っ気に微笑むA子さんにすぐに捕まってしまい、悔しさと恥ずかしさでまた声を荒げてA子さんに当たり散らしてしまいました。 (2023/11/22 00:22:51) |
尊き人へ | > | そんなF男くんの我儘をA子さんはニコニコと昔のままの優しい笑顔で受け止め、F男君が落ち着くまで見守ってくれました。 (2023/11/22 00:23:02) |
尊き人へ | > | そして優しく宥めると、「ねえ、久しぶりにお姉ちゃんとデートしようよ!」と強引に手を引き、ハンバーガーの店に入るとF男君にハンバーガーやポテト、ジュースも買ってくれました。 (2023/11/22 00:23:12) |
尊き人へ | > | お腹が空いていたF男君は嬉しくて夢中で頬張りながら、心配して経緯を聞くA子さんに朝からの事を全て素直に話しました。 (2023/11/22 00:23:33) |
尊き人へ | > | ニコニコ顔のA子さんは一通り話しを聞くと、「よし、お姉ちゃんと行こうか?」と、何かを企んだ不敵な笑みを浮かべ、お腹を満たしたF男君を連れて外へ飛び出しました。 (2023/11/22 00:23:52) |
尊き人へ | > | カブトムシというのは早朝でないとなかなか見つけられない昆虫なのだそうですが、それを知っていたF男君はそれでもA子さんの気持ちが嬉しくて、午後も過ぎた森林の公園の中をA子さんと歩き回りました。 (2023/11/22 00:24:03) |
尊き人へ | > | やはり、カブトムシは居ませんでした。 けれど、F男君は一緒に土まみれになったり、蚊に刺され乍らも優しい笑顔で遊んでくれたA子さんが嬉しくて嬉しくて、その日は一生の思い出になりました。 (2023/11/22 00:24:14) |
尊き人へ | > | F男くんはそれまでの甘えん坊で我儘だった自分の心に気がつき反省をし、逆に情の深いA子さんから他者への優しさや思いやり、施しの姿勢を学び、今の生き方の指針となりました。 (2023/11/22 00:24:36) |
尊き人へ | > | E子さんによるとF男君にとってA子さんは憧れのお姉さんで、初恋の人だったそうです。 なので、A子さんが重い病と知った時、既に社会人となり家庭を築いていたF男君ですが相当なショックだったようで、直ぐに職務を休んで伝手を探し沢山の病院や先生を紹介し、必死に恩に報いようと頑張ってくれたそうです。 (2023/11/22 00:25:02) |
尊き人へ | > | 願い叶わずA子さんを送らねばならなくなった時もコロナ禍で密を避けるため、会場には入れないとわかっててもやはり会社を休んで見送りに来たF男くんの男泣きをする姿がそこにありました。 (2023/11/22 00:25:21) |
尊き人へ | > | 実はこのF男くんのプチ家出の時の話は後日談があり、E子さんもずっと後になってからA子さんに助けてもらっていた事をF男くんに聞かされて知ったのですが、 (2023/11/22 00:26:01) |
尊き人へ | > | 弟からこの話を聞いた時、E子さんはひどく驚き、F男君も姉から驚きの理由を聞いて絶句してしまいました。 (2023/11/22 00:26:12) |
尊き人へ | > | それは、カブトムシを探しに森林の中を一緒に駆けずり回り、カブトムシは見つからないけれどと言いながらもF男君を喜ばそう他の昆虫達を見つけて沢山捕まえてくれたA子さんは、 (2023/11/22 00:26:24) |
尊き人へ | > | 写真を見るだけでも悲鳴を上げるくらい、大の昆虫嫌いだったという思いもかけない事実でした。 葬儀でこの話を聞いた友人達は皆、A子さんがどれだけ昆虫が苦手なのかを知っていただけに、彼女の人間の大きさと情の深さに改めて圧倒され目頭を抑えました。 (2023/11/22 00:30:21) |
おしらせ | > | 尊き人へさんが退室しました。 (2023/11/22 00:30:27) |
おしらせ | > | 尊き人へさんが入室しました♪ (2023/11/22 02:29:57) |
尊き人へ | > | 【第五話・万引き】A子さんとG子さんが出会ったのは、県で一番の偏差値を誇る進学校の同じクラスが始まりでした。 (2023/11/22 02:30:01) |
尊き人へ | > | 集団の中でリーダーシップを見せる人には、大きく二つのタイプがあると思うのですが、一つは周りから信頼され、頼られて人望の厚いカリスマタイプの人と、 (2023/11/22 02:30:13) |
尊き人へ | > | もう一つは大人しい集団の中で、アグレッシブに自ら舵を取って周りを動かして引っ張るタイプだと思います。 (2023/11/22 02:30:24) |
尊き人へ | > | A子さんはまさに前者のタイプ、G子さんは後者のタイプで二人共、多くの友達をまとめるリーダー的な生徒でした。 (2023/11/22 02:30:36) |
尊き人へ | > | 進学校だけにヤンチャな生徒は居らず、またバッキバキの体育会系も居ません。 県下別々の中学出身者が多いこともあって実に平和で大人しいクラスでした。 (2023/11/22 02:30:49) |
尊き人へ | > | グイグイと自分を出す仕切り屋のG子さんはそのリーダーシップを発揮して、A子さん含めたグループのリーダー的存在として話題を振り、休み時間やランチタイムも中心となって賑やかにお喋りの花を咲かせていたのですが、 (2023/11/22 02:31:03) |
尊き人へ | > | 関東圏の有名大学を志望していたG子さんは、思うように伸びず手応えの無い結果にストレスと不安でイライラして或る日、友達らと時々通っていた雑貨屋でそんな欲しくも無かったビーズ細工のアクセサリーをつい魔が差して万引きしてしまいました。 (2023/11/22 02:31:13) |
尊き人へ | > | そしてそれを翌日、虚勢を張って悪ぶったG子さんは友達の前で自慢げに話し、万引きしたアクセサリーを皆に見せびらかしました。 (2023/11/22 02:31:24) |
尊き人へ | > | 周りの反応は引いたような微妙な空気ではあったものの、腫れ物に触れぬ様子見のように、「やばいよそれー」等とふざけた感じで事勿れに終わりました。 (2023/11/22 02:31:36) |
尊き人へ | > | しかし、そんな冷めた友達の輪が解けた後の掃除の時間、教室を移動する時など、G子さんが一人になっている時を見計らったようにA子さんは何度も何度も万引きした事を問い詰めて来ました。 (2023/11/22 02:31:49) |
尊き人へ | > | 「万引きなんてダメだよ! お店に返しに行かなきゃダメだよ! お店の人に謝りに行こうよ!」と、普段は笑顔を絶やさないA子さんの、これまで見た事のない思い詰めた真剣な顔がそこにありました。 (2023/11/22 02:32:01) |
尊き人へ | > | G子さんは気が付いてました。 それは、普段は控えめでにこにこと聞き役であるA子さんの方が誰からも好かれ、自分より友達やクラスの人達から人望が厚く影響力を持っている事を (2023/11/22 02:32:16) |
尊き人へ | > | それ故にわざわざ他の生徒の居ない時を狙い、G子さんの事を思って叱り、本気で心配してくれるA子さんの優しさも痛い程伝わりました。 (2023/11/22 02:32:29) |
尊き人へ | > | 心の弱かった当時のG子さんがやっとA子さんの説得に応じた訳は、実は反省の気持ちよりも、この影響力の強いA子さんに見限られると学校でみんなにハブられてしまうと言った身勝手でA子さんという人を見誤った理由でした。 (2023/11/22 02:32:41) |
尊き人へ | > | 取り敢えずA子さんの説得に応じて店に謝りに行く事になったG子さんですが、普段のオラオラな勢いもすっかり影を顰め、警察沙汰になる事、親に知られる事、退学になる事、大学受験が受けられない事で身勝手な心配に震えが止まりません。 (2023/11/22 02:32:55) |
尊き人へ | > | しかしA子さんはそんなG子さんをずっと側から、大丈夫だからと寄り添って励まし、付き添ってくれました。 (2023/11/22 02:33:08) |
尊き人へ | > | 店にやっとの思いで勇気を出して入っても、やはり声も出せず目も伏せてただ震えるしか出来ないG子さんに、その時凛としたA子さんの声が聞こえて来ました。 (2023/11/22 02:33:19) |
尊き人へ | > | 「すみません、この前【私達二人で】お店の商品を盗んでしまいました。」「申し訳ございません、改めて代金を払わせて下さい。そしてお願いします。どうか何卒お許し下さい。」 涙声で謝罪するA子さんの、私達、と言った声がはっきりと聞こえました。 (2023/11/22 02:33:32) |
尊き人へ | > | 緊張の中、予想外のA子さんの言葉に狼狽して何も出来ないG子さんをよそに、A子さんと店主のおばさんとでトントンと話は進み、ようやくG子さんも落ち着いて謝罪し、詫びる事が出来た時、A子さんには押し切られて半分ずつお金を弁償し、店主からあっさり許されてお店を後にしました。 (2023/11/22 02:33:45) |
尊き人へ | > | G子さんは落ち着いてからやっと、何故A子さんまで濡れ衣を被った上にお金まで払うのかと、お金を返そうとしてA子さんに感謝と謝罪を告げると、A子さんはいつもの笑顔で、 (2023/11/22 02:33:57) |
尊き人へ | > | 「G子ちゃんよく頑張ったね!友達として嬉しかったよ!でももう二度と駄目だからね?」とG子の勇気を労い、二人だけの秘密の友情記念だから!とお金は最後まで受け取りませんでした。 (2023/11/22 02:34:09) |
尊き人へ | > | 心から反省したG子さんはそれから更にA子さんを大好きになり、深い友情を通わせながら勉学にも励み、やがて念願の大学受験に無事受かって関東へと旅立って行きました。 (2023/11/22 02:34:21) |
尊き人へ | > | 数年後、すっかり東京にも慣れたG子さんが夏休みに久しぶりに帰郷する事になり、あれ以来以来恥ずかしくて行かなかった雑貨店が懐かしく思い出され、 (2023/11/22 02:34:35) |
尊き人へ | > | 何年も経って店主のおばちゃんも流石に顔も忘れているだろうとドアを開いたその時、 「あら!久しぶりだねー!元気?」と目が合って直ぐに、まさかの声をかけられました。 (2023/11/22 02:34:46) |
尊き人へ | > | 確かに万引きする前はG子さんも何度か行ってましたが、そんなに馴染み客でも常連でも無かったG子さんは何故こんなに覚えられているのかと驚いてドギマギしたものの、 (2023/11/22 02:34:56) |
尊き人へ | > | それでも昔の過ちを無関係だったA子さんに謝らせてしまった事に悔いが残っていたG子さんは今度は自分一人、誠実な態度で改めて心から店主に謝罪しました。 (2023/11/22 02:35:06) |
尊き人へ | > | 謝罪を抱擁して温かく迎えてくれた店主に、「私のこと、今でも覚えてくれていたのですね」とG子さんが何気なく口に出した時、店主から何年も知らなかった思いも寄らぬ秘話を明かされました。 (2023/11/22 02:35:17) |
尊き人へ | > | G子さんがA子さんに連れられて謝罪に来るよりずっと前に、実は友達の万引きを知ったA子さんがたった一人でお店に謝罪に来たと言うのです。 (2023/11/22 02:35:28) |
尊き人へ | > | 店主に自ら学生証を提示して身分を明かしたA子さんは、必ず【一緒にやった友達】も連れて来るので、その時もう一度、ちゃんと謝罪させて下さい!とポロポロと泣きながら何度も何度も頭を下げてお願いしたと言うのです。 (2023/11/22 02:35:39) |
尊き人へ | > | 「こんな店だから毎日のように万引きされるけれど、犯行を見つかったわけでもないのに自分から謝罪に来たなんて人はあなた達しか居ないわよ」と聞いたG子さんは、それで私を覚えていたのだと納得しました。 (2023/11/22 02:35:51) |
尊き人へ | > | 「ところであんたの友達のあの子なんだけどさ?・・・あの子、本当に万引きしてたのかい?」続けて店主から質問されたG子さんは忽ち咽び泣き、店主にハッキリと大きな声で断言しました。「A子はやってません!」と。 (2023/11/22 02:36:22) |
尊き人へ | > | それを聞いた店主は嬉しそうな笑顔で「そうかい、やっぱりそうだったかい、やっぱり思った通りだ!」と手を叩き、「あんな子がするわけがないと、あの時から何年もずっと気になってたんだよ。」と打ち明け、これでスッキリしたとまた喜びました。 (2023/11/22 02:36:42) |
尊き人へ | > | バツが悪くてそれっきり店を遠ざけていたG子さんと対照的に、普段見かけなかったA子さんが頻繁に買い物に顔を出すようになり、不審に感じた店主から何度疑問をぶつけられても「私も一緒にやりました。」と、曲げる事なく言い張っていた事を聞かされました。 (2023/11/22 02:37:05) |
尊き人へ | > | 実はA子さんの父親は犯罪を取り締まる職務、しかもかなり階級の高い人だったのです。 そんなA子さんに汚名を着せて、受験を控えた大事な時に人生を台無しにしてしまうくらいのリスクを負わせてしまった自分の愚かさに悔やみ、 (2023/11/22 02:37:19) |
尊き人へ | > | G子さんは目が腫れ上がる程ボロボロと泣いて嗚咽に咽び、これからは絶対に何があってもどんな事が起きても、恥ずかしくない生き方をしようと心に誓いました。 (2023/11/22 02:37:31) |
尊き人へ | > | G子さんにとっては決して誰にも話せない過去の醜い汚点でしたが、亡くなったA子さんの為にも、皆んなに知って欲しいと初めて打ち明ける事にしたのです。 (2023/11/22 02:37:43) |
尊き人へ | > | 友達や身内には甘く、ニヤケ顔でなあなあにしてしまう人が多い世の中ですが、大切な友達だからこそと真剣に向き合って、真っ直ぐな道に戻してくれるA子さんの生き方の美しさを聞いた多くの友人達は皆、心に深い感銘を受けたのでした。 (2023/11/22 02:38:07) |
尊き人へ | > | 【エピローグ】 (2023/11/22 02:38:54) |
尊き人へ | > | こんな尊い生き方をした人が居た。 それだけで何か、この世は捨てたものでは無いのだと、希望に救われる気持ちになりました。 (2023/11/22 02:40:33) |
尊き人へ | > | 恐らく多くの出会いがあったであろう事は想像に容易く、その多くの相手の心に美しい種を蒔いて行ったのだろうと思う。 (2023/11/22 02:42:33) |
尊き人へ | > | 事実、私の心にも既に沢山の理想が芽吹いたのだから。 (2023/11/22 02:44:21) |
おしらせ | > | 尊き人へさんが退室しました。 (2023/11/22 02:44:24) |
おしらせ | > | 夏海さんが入室しました♪ (1/7 11:18:08) |
夏海 | > | 冬空さんとの「不思議な舘」より、思い入れがある作品を加筆修正して記載させて頂きます。 (1/7 11:19:22) |
夏海 | > | 【33話より】 (1/7 11:19:44) |
夏海 | > | 何の前触れもなく、激しいクラクションを鳴らしながら暴走する鉄の塊が、確信的に歩行者天国を歩く人の群れを狙い薙ぎ倒している。 いつも【幸運の女神様】に救われて来た俺の人生もここまでか、と覚悟をしてゆっくり目を閉じた。 (1/7 11:19:52) |
夏海 | > | ◆◆◆◆◆◆ (1/7 11:20:06) |
夏海 | > | 俺は自分の親等全く知らない。どうせ自分のいっときの快楽の為に男は無責任に種を植え、女も未練なく産み落として逃げて行ったのだろう。 生まれた時から孤児として俺は施設で育ち、そんな俺に周りの大人達は知ったように「あなたはとても愛されて産まれてきたのよ。」と子供でも嘘だとわかる慰めを掛けていた。 (1/7 11:20:18) |
夏海 | > | 施設には歳の近い孤児が何人も居たが、肉親の愛情に飢えていたのか、世話役の大人達の愛を少しも解りもせずに俺は誰とも馴染めず、協調性も無ければ泣いている孤児仲間にも共感性すら持たず冷めた目で五月蝿いと思うような、常に群れから外れて過ごすのが好きな嫌な子供だった。 (1/7 11:20:28) |
夏海 | > | そんな冷酷な心で集団行動もせず、言うことも聞かず、先生達の手を焼かせる俺を生意気だ目障りだと、群れた年長者達から虐められるようになり、小さい頃の俺は毎日泣いてばかりいた。 (1/7 11:20:38) |
夏海 | > | 初めて俺が女神様に会ったのは、丁度その頃だった (1/7 11:20:49) |
夏海 | > | 「大丈夫?ホラ。お姉ちゃんが抱っこしてあげるから、もう泣かないの。」と、施設では見たことも、これまで会ったこともないその女神様は優しく俺の涙を拭いてくれた。 (1/7 11:21:02) |
夏海 | > | 落ち着いてきて泣き止み、ようやく俺が顔を上げた頃、安心したかのようにお姉ちゃんは消えていた。 (1/7 11:21:17) |
夏海 | > | その後も虐められるたびにいつの間にか女神様が現れ、その都度先生達への恩を仇で返す俺を叱り、他人への思いやりを説き、友達の大切さを教え、悲しみは慰め、悔しがると励ましてくれた。 (1/7 11:21:32) |
2023年09月24日 05時38分 ~ 2024年01月07日 11時21分 の過去ログ
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